JVCEAがICOとIEOの新ガイドラインを発表
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- 2019.10.01.
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金融庁によって認定された日本国内の仮想通貨交換業者の自主規制団体である一般社団法人日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)が、新たな自主規制案と補足的なガイドラインについて発表しました。
この規制案とガイドラインはあくまでも自主規制団体が定めたものではありますが、JVCEAは金融庁が認定した組織であり、ほとんどの仮想通貨交換業者が加盟していることから、実質的な規制となります。
またこの自主規制は、発表した時点から即時施行という位置付けになります。
この自主規制内容について詳しくご説明しましょう。
JVCEAが新たなガイドラインを発表
2019年9月27日、一般社団法人日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)が、新たなガイドライン「新規仮想通貨の販売に関する規則」を発表しました。
新規仮想通貨の販売に関する規則
2019
年 9 月 27 日
第1章
総則
(目的)
第
1 条 本 規則は 、会員が行う新規仮想通貨の販売業務について、必要な事項を定める。
(定義)
第2条
この規則に使用する用語の定義は、次の各号のとおりとする。
(1) 発行
仮想通貨を新たに生成した上で、利用者に対して当該仮想通貨を交付し、
利用できる状態に置く行為をいう。
(2) 発行者
仮想通貨を発行する者をいう。
(3) 新規仮想通貨
発行者が発行する仮想通貨をいう。
(4) 新規仮想通貨の販売
新規仮想通貨を売却又は新規仮想通貨と他の仮想通貨を交換する行為のう
ち、当該行為によってはじめて発行者(受託販売業務による場合には、発
行者及び会員)以外の第三者が当該仮想通貨を取得するものをいい、新規
仮想通貨を受け取る権利を売却し又は他の仮想通貨と交換する行為を含む。
(5) 自己販売業務
会員自ら発行する新規仮想通貨の販売を行う業務をいう。~
引用:JVCEA
発表された新しいガイドラインは新規仮想通貨販売に際したICOとIEOについての詳細に加えて、これらは実現させることができるものなのかどうかを判断するとともに、詳細情報を提供することを求めるものになっています。
ICOについて
ICO(Initial coin offering)は、プロジェクトを計画した企業が自らトークンを発行して法定通貨や仮想通貨を調達する手法を指しますが、ICOに対しては以下のような記述がされています。
会員は、自己販売業務を行うにあたっては、対象事業に適格性、実現可能性及び持続可能性(以下「実現可能性等」という。)が認められることについて、次の各号に掲げる審査項目(以下「対象事業審査項目」という。)に基づいて自ら審査するものとし、かかる審査に必要な体制を整備しなければならない。
引用:JVCEA
すなわち、事業がICOを実施するのに相応しい内容かどうか、実現性はあるのかなどを細かな項目に分け、自ら審査するように申し渡しているわけです。
自己審査の内容
実際にICOにおける自己審査にはどのようなものがあるのか、全ては紹介しきれませんが、代表的なものをいくつかご紹介しましょう。
トークンを発行して取引する必要性や条件設定の妥当性を審査するため、機関設計、意思決定機関の責任遂行状況、内部管理体制の状況、財政状況やその健全性、事業が適法かどうか、事業に必要な認可所得状況など、客観的に判断するための具体的内容を記述してあります。
また自己審査時に要する資料についても具体的に記述されています。
登記事項証明書や税務申告書などの公的資料に加え、貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書などの資金面に関する資料、そして調達資金の使途についての資料などに基づいて自己審査するように書かれています。
自己審査をおこなった際には、どういう資料に基づいて審査したのか、その資料をどう分析し、どう評価したのか、そしてその過程まで記録するよう申し渡されています。
そして重要なのは、自己審査だけで完結するのではなく、これらの資料や記録をJVCEAが改めて審査することになっていることであり、自主性を重んじるものの、最後はJVCEAが責任をもって審査するということです。
トークン購入者に対する情報提供
ICOを実施する際にはトークン購入者に書面やメールなどをもって、発行者について、新規仮想通貨について、資金調達や対象事業について、販売に関してなど、細かな情報を提供することを求めています。
また販売後にも書面やメールなどで、トークンの総発行量や総額などについて提供しなければならない旨も記述されています。
つまりどれだけ販売でき、いくらの資金を集めることができたのかを購入者に開示することを求めているわけです。
資金管理について
ICOで集められた資金は、その管理方法も厳格に定められています。
金銭でも、仮想通貨であっても、ICOで集めたものと自己資金とは別々に保管しておき、仮想通貨の場合はオフラインで保管することが条件になっています。
またICOに際して購入者に提示した情報以外の使途に、この資金を使うことも許されておらず、使途に関しても、財務諸表等で情報開示することが条件となっています。
義務違反が生じた時の対応
上記の内容は抜粋であり、ガイドラインには非常に細かな条件が記載されています。
そしてこれらの条件に違反した場合の対応についても記載されています。
万が一、違反した場合には、違反内容や是正措置などについてJVCEAへの報告義務があり、JVCEAはこのことを公表する旨も記載されています。
IEOについて
IEO(Initial Exchange Offering)は、プロジェクトを計画した企業がトークンの販売や配布について、特定の仮想通貨取引所に委託する資金調達方法のことを指します。
IEOについてもICOと同様に細かな条件が設けられていますが、大きく異なる点はIEOの場合、プロジェクトを計画した企業が直接購入者にトークンを販売しないため、仮想通貨交換業の認可は必要がありません。
ただしIEOを受託する側、すなわち仮想通貨取引所には以下のことが義務付けられます。
(1) 受託販売審査部門並びにその責任者及び担当役員の設置
(2) 受託販売審査部門において受託販売審査業務を遂行する担当者が受託営業業務及び仮想通貨関連業務に携わらないこと
(3) 受託販売審査部門を担当する役員が受託営業部門及び仮想通貨関連部門を担当しないこと
引用:JVCEA
これは受託販売をする仮想通貨取引所において、審査する人材を配置すること、そしてそれらの人材が販売やこれに関する営業的動き、勧誘などに関わってはならないとしているわけです。
受託販売時の社内体制
受託販売をする仮想通貨取引所では、IEOに適応した社内体制作りが求められます。
受託販売審査についての項目作成や審査手順整備、社内マニュアル整備、履行状況モニタリング、審査記録作成などにも及んでいます。
またこれらの資料類などは、JVCEAが提出を要求した際には応じる必要があります。
受託販売の審査などについて
受託販売を請け負う際に重視されるのは、トークン発行者が反社会勢力ではないことを確認しなければならない点です。
もし反社会勢力であれば受託契約をしてはならないことが明記されています。
さらに、発行者が展開しようとする事業の実現性や調達資金の管理体制など、ICOの「自己審査の内容例」に準拠した体制ができているかどうかも見極める必要があります。
なおJVCEAはICOと同様に、受託販売審査の結果を検証するため、会員組織も協力しなければならないことが義務付けられています。
発行者の履行状況のモニタリング
発行者はICOの項で記述した「自己審査の内容例」、「トークン購入者に対する情報提供」、「資金管理について」、「義務違反が生じた時の対応」の内容が正しく履行されているかどうかをモニタリングすることが義務化されています。
モニタリングにおいて、発行者が上記の点で適切でないと判断できる場合には、受託販売者から是正を申し入れることができ、それでも応じない場合には取り扱いの中止や受託販売契約の解除をするとともに、JVCEAに報告しなければなりません。
新ガイドラインの基本的なスタンス
JVCEAが発表した新ガイドラインは非常に細かな部分にまで配慮されたものであり、全てを紹介することはできませんが、基本的に運営サイドの自主性を重視したものになっていることがお判りいただけたでしょうか。
またIEOでは発行者と受託販売者が相互にガイドラインに沿ったものとして進められているかをチェックするものであり、これもやはりそれぞれの自主性を重視したものとなっています。
そして最後のチェック機構、いわば砦としてJVCEAが存在している形です。
まとめ
JVCEAの新ガイドラインについて説明させていただきました。
ガイドラインは非常に細かい部分にわたって記述されており、この通り運営されるのであればICOやIEOでは何も問題が生じないであろうことが想像できます。
しかしここまで細かなことを決めていかなければならないということは、株取引などと比べると仮想通貨取引がまだまだ未熟な市場であり、犯罪などに利用されるケースも多いのだとも感じてしまいます。
今回の新ガイダンスが正しく履行され、ICOやIEOに対して警戒することなく購入できるようになることを期待したいものです。