東京都がデジタル通貨発行に向けて動き出す?
- 仮想通貨関連
- 2019.09.10.
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- 東京都がデジタル通貨発行に向けて動き出す?
画像引用:東京都
仮想通貨は確実にその世界を広げつつあり、今や国そのものが仮想通貨を発行しようとプロジェクトを立ち上げているケースも多く見られます。
いずれ各国独自の仮想通貨が登場してくるはずですが、わが国日本の首都である東京都でも仮想通貨を発行しようとする動きがあることが分かりました。
その仮想通貨についての詳しい情報は現段階で明らかにされていませんが、東京都が仮想通貨を発行しようとする背景、そして諸外国や地域などにおける独自の仮想通貨発行プロジェクトなどについてもご説明しましょう。
都知事の所信表明内にデジタル通貨の記述
2019年9月3日に更新された東京都のwebsiteで、小池百合子東京都知事が令和元年の都議会定例会を開催するにあたっての所信表明を公開しました。
その中に東京都が独自のデジタル通貨を発行する旨が記述されていました。
内容は以下のようなものです。
キャッシュレス化の促進は、都民や外国人旅行者の利便性向上はもとより、決済データを活用した新たなサービスの創出等に繋がる、重要な成長戦略であります。
今年度より開始するモデル事業では、SDGsの推進に貢献された皆様に、民間の決済サービスで利用できる都独自のデジタル通貨を発行し、キャッシュレス決済の拡大に繋げてまいります。
引用元:東京都 施政方針
この中で、小池都知事はSDGsに貢献した人に対してデジタル通貨を発行すると明言しています。
ではSDGsとはいったい何のことなのでしょうか。
また上記の記述は、東京都の成長戦略の一環として「Society5.0」の実装の項に記述されています。
Society5.0はどういうものなのでしょうか。
SDGsについて
SDGs はSustainable Development Goalsの略称で、持続可能な開発目標のことを意味しています。
2015年9月に開催された国連サミットにおいて、加盟国の193ヵ国が2030年までの15年間での達成を目標にすることとして採択されました。
その内容には17の目標があり、そのために必要な169の対象が設定されています。
17の目標のうち、幾つかを紹介すると以下のようなものがあります。
- 貧困をなくそう
- 飢餓をゼロに
- エネルギーをみんなに そしてクリーンに
- 働きがいも経済成長も
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
17の目標は大きく分けると3つのジャンルに区分することができます。
ひとつは貧困な国や人を対象にしたものであり、もうひとつは世界的規模での発展に関すること、そしてもうひとつが自然や平和に関することです。
このSDGsを達成させるために政府は色々な取り組みをおこなっており、2019年の取り組みとして発表された「SDGsアクションプラン2019」の骨子の中にSociety5.0が出てきます。
Society5.0について
ではSociety5.0とはどういう意味なのでしょう。
これは政府が日本の目指していくべき未来社会のステージともいえるもので、以下のようなステージが定義されています。
- 人間が地球上に誕生し、狩猟をして生きている社会=Society1.0
- 人間が生きているために農耕をしている社会 =Society2.0
- より社会が発展するために工業に重点を置いた社会=Society3.0
- 食料や工業は充実しており、情報が重視される社会=Society4.0
上記で分かるように、現在の日本はSociety4.0の段階にあります。
そして次に進むべき未来社会を「AIやIoTで実現する次世代社会」=Society5.0と位置付けています。
都知事の考えるデジタル通貨のあり方
Society5.0とSDGsについて説明しましたが、では小池東京都知事はデジタル通貨をどのようにとらえているのかを改めて説明しましょう。
小池東京都知事の所信表明によると、SDGsの推進に協力した人に独自のデジタル通貨を発行すると記しています。
例えば環境保全に貢献するような行動などをするとデジタル通貨が発行され、決済サービスで使うことができるわけです。
これはおそらく、東京都としてSDGs推進となる「具体的な何か」を定め、それに対するインセンティブ的な使い方をすることで、より多くの人々にSDGs推進に加わってもらえるように働きかけることを狙っているのでしょう。
ただ、現時点ではその「具体的な何か」がどのようなものかは不明であり、デジタル通貨そのものの仕組みや決済サービス方法もはっきりしません。
しかし東京都として、独自のデジタル通貨発行をはっきりと考えていることは間違いありません。
国や地域などが発行する仮想通貨について
現在の仮想通貨の代名詞となっているビットコインは非中央集権制で運営されていますが、中にはリップルのように中央集権制で企業によって管理・運営されているものもあります。
ただしビットコインであっても、マイニングによって作り出される以上は、何らかの企業が関わっています。
つまり、何らかの形で企業が営利目的としてかかわっているのが一般的です。
しかし近年は、東京都が独自のデジタル通貨発行を考えているように、国や地域などが仮想通貨の発行を考えているケースもあります。
いくつかの具体例を挙げて紹介しましょう。
中国の仮想通貨構想
中国の中央銀行である中国人民銀行は現在デジタル通貨計画を実施しており、少しでも早くローンチできるよう実験を繰り返していると報道されています。
実験は一部の企業と非政府組織だけの非公開環境でおこなわれおり、フェイスブックの仮想通貨リブラが考えている2020年前半のデビューよりも、中国人民銀行の仮想通貨の方が早く進められる可能性も指摘されています。
画像引用:China Daily
シンガポールのプロジェクト・ウビン
シンガポールでもブロックチェーン技術を活用するためのプロジェクトが進行しています。
このプロジェクトはシンガポール金融管理局によって進められており、デジタル中央銀行がトークンを発行することができるシステム開発を目的としています。
画像引用:Monetary Authority of Songapore
大手小売店の仮想通貨
仮想通貨発行に向けて動いているのは国ばかりではありません。
米の大手小売店ウォルマートが指定小売店などを対象にした、米ドルなどにペッグするステーブルコインの特許を申請していることが報道されています。
画像引用:US Patent & Trademark Office
地元住民と観光客向け地域通貨
日本でも地方におけるブロックチェーン活用が進んでいます。
飛騨信用組合が、地元住民と観光客だけに向け、高山市・飛騨市・白川村だけの地域限定通貨「さるぼぼコイン」を発行しています。
さるぼぼコインはブロックチェーン技術が応用されており、店舗は専用端末を用意する必要がなく、利用者にもメリットがあるなど、地元地域の活性化に役立てられています。
画像引用:飛騨信用組合 さるぼぼコインのご案内
東京都のデジタル通貨構想の位置付け
上記で紹介した国や店舗、地域などが発行・構想している仮想通貨と東京都が構想しているデジタル通貨は位置付けが若干異なります。
細かな部分が不明ではあるものの、目的としてSDGsをすすめつつ、キャッシュレス決済の裾野を広げることに主眼が置かれているようです。
またいつまでに何をどうすると考えているのかも不明なため、予測ではありますが、オリンピックを視野に入れているのではないかとも推測されます。
まとめ
小池東京都知事の所信表明に記述されていたデジタル通貨構想についてと、既に動いている諸外国や地域などの仮想通貨プロジェクトを例として紹介させていただきました。
東京都は明らかに次世代を見据えて動き始めています。
実際にこのプロジェクトが形になった時、ビットコインなどの仮想通貨はどうなっており、仮想通貨取引はどうなっているのでしょう。
仮想通貨に関心がある方なら興味深いのではないでしょうか。
東京都のデジタル通貨構想の詳細が判明次第、紹介させていただきます。