Binanceが新たな独自通貨Venusについて発表
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- 2019.08.22.
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多くの人が利用しているSNSのFacebookがホワイトペーパーを発表した仮想通貨リブラは、多くの国々や規制当局からの反発に苦慮しています。
そんな状況の中、登録者数が600万人を超える世界一ともいわれる仮想通貨取引所Binanceが新しい独自仮想通貨Venusを発表しました。
Venusに関する詳細は現時点で明らかにされていませんが、リブラに似た独自の地域版仮想通貨であることから、注目が集まっています。
この情報を分かっている範囲でご説明するとともに、Facebookのリブラとの違いなどについてもご説明しましょう。
Binanceが独自の仮想通貨Venusを発表
世界にその存在が知られており、仮想通貨取引所としても世界最大規模ともいわれているBinanceが、独自の仮想通貨Venusを開発するプロジェクトについて発表しました。
発表では詳しいことは触れられていませんが、この仮想通貨Venusはステーブルコインとして開発し、しかも地域密着型のステーブルコインを目指すとのことです。
Binanceの発表では独立した「地域版のLibra」を作成したいと考えているとのことですが、ステーブルコインであるからには法定通貨にペッグしたものであり、グローバルに利用されるものを目指すようです。
Binanceがこのプロジェクトを始める理由
Binanceがこのプロジェクトをどういう理由で始めたのかについては、以下のように発表しています。
・多くの国や地域の規制当局と連携しながら、コンプライアンスシステムを確立
Binanceがこれまでに多くの国の規制当局とコミュニケーションを取りながら、グローバルな顧客ネットワークとコンプライアンスされたシステムを確立してきたこと。
具体的例としてマルタがブロックチェーンの国になったこと、米国では規制にしっかりと対応していること、そしてアフリカでもブロックチェーンサービスを提供していることなどを例に挙げています。
・世界最大のブロックチェーン企業として安全・安定なシステムを構築
Binanceは世界最大のブロックチェーン企業であり、安定したコインを安全に運用できるシステムを確保していること。
そしてこれらを常に最適化することで、送金速度も銀行の支払いシステムと変わらないことを挙げています。
・特定の国の金融支配でなく、開発途上国にもメリットある改善が望まれていること
金融の世界において、システムを再構築することで開発途上国が経済的にも自立できるとともに、金融の安全を守りながらも国同士や人同士が協力できるような環境を作っていきたいことを挙げています。
BinanceのVenus構築に対する考え方
ではBinanceは仮想通貨Venusをどのように構築していこうと考えているのでしょうか。
Facebookのリブラは、企業そのものに対する不信感もあるためか、当局からの強い反発を受けています。
「地域版のLibra」とはいえ、Libraを例に出すのであればこのことを無視するわけにはいかないはずです。
Binanceが考えているのは、Libraのように自分たちが主導で展開するので許可して欲しいと主張しているのではなく、あくまでも共に構築していきたいと考えているようです。
そのために政府や当局などを構築プロジェクトの対象とし、オープンな共同体にしていきたいと主張しています。
Facebookのリブラとの位置付けについて
では仮想通貨Venusは、Facebookの仮想通貨リブラにとってどのような存在になるのでしょうか。
リブラに取って代わって仮想通貨の世界的な先駆け的存在になろうとしているのか、それとも全く関係のない存在だと位置づけているのでしょうか。
しかしBinanceのCEO、Zhao氏の見解は、これらと全く異なるものでした。
彼は自身のTwitterの中で、Binanceにとってリブラはライバルではなく、リブラと共存できることを考えていると述べています。
またVenusのプロジェクトを進めていくことは、リブラの構築を助けるものになっていくはずだとも書いています。
画像引用:cz_binance Twitter
Binanceの中国語版にはリブラに関連する記述があります。
その内容をまとめると、多くの政府や企業がテクノロジーを使って金融の世界を変化させてきている。
リブラは世界の金融システムの再構築だけでなく、大きく変化させてくれるものであり、変化に抵抗し続けていくのではなく、変化を受け入れるべきではないかと述べるとともに、リブラは法令を遵守した規制の中で正しく開発されていくべきであることも主張しています。
そして、そのために必要なこととして以下の3つを挙げています。
まず1つは、中央政府が金融システムに対してブロックチェーン技術と仮想通貨をどのように位置づけるのかを確立しなければならないこと。
2つ目に、実施範囲を決め、なおかつ外部からの影響を受けない環境を整えたうえで仮想通貨による決済サービスを試験してみるべきであること。
3つ目として、民間企業が発行する仮想通貨によって、国を超えた決済システムが開発できるようにするべきであること。
上記の3つを見ると、Venusのプロジェクトはリブラを否定しておらず、むしろ仮想通貨によって国境を越えた決済ができることを積極的に進めるべきだというスタンスであることが分かります。
画像引用:Binance
Venusとリブラのプロジェクトが異なる点とは
仮想通貨Venusのプロジェクトについては、現時点でホワイトペーパーが発表されているわけではありませんので、詳しいプロジェクト内容は分かっていません。
ただ今の段階でいえることは、Venusとリブラのプロジェクトにはいくつかの違いがあります。
そのポイントについて説明しましょう。
母体となる企業に対する信頼性
仮想通貨リブラの運営母体であるFacebookは、これまでに何度も個人情報の流出などを繰り返しています。
SNS上でさえもこのような事態になっている企業が、より重要度の高い仮想通貨において個人情報を保護することができるのかという疑問が生じるのは当然かもしれません。
一方、仮想通貨Venusの運営母体であるBinanceは、世界でも最大手といえる仮想通貨取引所です。
2019年5月にハッカーによってサイバー攻撃を受け、日本円に換算すると44億円のビットコインが流出しましたが、それに対する対応は非常に素早く、即座に引き出しをストップさせると同時に、被害額は全て補填することを発表しました。
これにより、Binanceに対する評価は流出前よりも高まったといわれています。
つまり両企業に対して、国や規制当局からの信頼度が元々異なることが挙げられます。
これが逆風の大きさに影響しているとも考えられます。
大手企業との提携について
Facebookのリブラは最初からMasterCardやVisa、PayPalなど、誰もが知っている世界の大手企業ばかり27社と提携することを発表していました。
リブラの特徴は世界の経済を大きく変えてしまう可能性があったため、世界の大手企業が経済を牛耳ってしまうのではないかと懸念されることにもつながっています。
一方Binanceは他企業との提携について、現時点で何も具体的な発表はしておらず、仮想通貨関連企業だけでなく、政府機関とも連携することを模索していると述べるにとどまっています。
すなわちBinanceはFacebookと比べると、慎重に進めていきたいことを前面に出していることがうかがえます。
ステーブルコインのペッグする通貨
リブラは発表時から複数の法定通貨にペッグするステーブルコインであることを発表していました。
この特性は利用者には都合が良いものの、国の根幹を成す通貨発行、すなわち経済をも大きく揺るがしてしまう危険性があります。
Venusはまだ詳細が発表されてはいませんが、地域密着型のステーブルコインという表現や地域版のLibraという表現から、リブラのような国の経済を揺るがしてしまう存在にはなりにくいのではないかと考えられます。
まとめ
Binanceが発表した仮想通貨Venusについて、その概略とFacebookの仮想通貨リブラの比較までをご説明しました。
Binanceの基本的なスタンスは、リブラと競合するものではなく共存を目指していると説明されています。
それは仮想通貨のネーミングにも表れており、リブラは天秤座を意味するのに対して、Venusは金星を意味するものです。
ネーミングからも競合するものではないことが読み取れます。
リブラがどこまでプロジェクトを実現できるかは不明ですが、Venusについてはこれまでの発表内容を見ている限りでは、時間はかかるものの実現可能なプロジェクトのように感じさせます。
Binanceの発表している内容を見ていると、世界的な仮想通貨の広まりは確実にやってくるものであり、それはもはや避けようのないことなのかもしれません。
Binanceが今後どのようにプロジェクトを進めていくのかは、仮想通貨FXに取り組む人だけではなく、一般の人々の生活にも影響してくることでしょう。
今後の発表に注目しましょう。