FATFの対日審査が10.28から実施に決定
- 仮想通貨関連
- 2019.08.08.
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FATF(金融活動作業部会)による第4次対日相互審査が2019年10月28日から11月15日の日程で実施されることが決まりました。
相互審査の結果は2020年6月のFATF総会で承認された後、同年夏に発表される予定になっています。
FATFの相互審査とはどういうもので、何に対して、どんな審査をするのでしょうか。
また相互審査の結果は日本の仮想通貨業界に対してどのような影響をもたらすのでしょうか。
詳しくご説明しましょう。
FATFの対日審査日程が決定
FATF(金融活動作業部会)の第4次対日相互審査におけるオンサイト審査の日程が、2019年10月28日から11月15日の3週間で実施されることが決定しました。
画像引用:財務省国際局 関税・外国為替等審議会
この審査はマネーロンダリング対策などを審査するもので、銀行や証券会社、地方銀行、保険会社などの金融機関に加え、仮想通貨取引業者も2018年10月から審査対象に加えることになりました。
具体的にはこれらの対象の中から20社ほどを候補に挙げて審査する運びのようです。
なお審査結果は2020年6月のFATF総会を経た後に発表されることになっています。
審査するFATFとはどのような組織か
FATFは、英文での正式名称が「Financial Action Task Force」、日本名は「資金洗浄に関する金融活動作業部会」と呼ばれる政府間組織です。
1989年のアルシュ・サミット経済宣言で設立されました。
画像引用:FATF
元々はマネーロンダリング対策のために設立されましたが、9.11のアメリカ同時多発テロ以降にはテロ資金供与対策も含めて対応するようになりました。
FATFは欧州の20ヵ国とアメリカ、中国、韓国、日本などの合計35ヵ国の国や地域で構成されており、加盟国の取り組みに対して相互に審査するようになっています。
審査以外に大きな影響力がある活動としてはブラックリスト策定です。
これは審査によって「非協力国・地域」を指定するもので、ブラックリスト入りするとその国や地域の対策が脆弱であると世界から認識されることになり、批判の対象ともなりかねません。
またその国との取引にはリスクがあると受け止められ、取引が遅延されてしまったり、取引そのものを回避されてしまう可能性もあります。
今回の審査が特に注目される理由
FATFが重点的に審査するのは、テロ資金となりかねない資金の出入りがある銀行、それに少額決済をおこなう資金移動業者、そして今回の第4次審査からは仮想通貨取引業者に対しても審査するようになりました。
特に仮想通貨取引業者に対しては、金融庁が法整備と内部体制整備などを判断し、適切な改善指導をしてきていますが、仮想通貨事業は歴史も浅く、事業者の規模に格差が大きいのが実情です。
大手の仮想通貨取引業者なら問題なく実施できる改善策が、資金や人材に乏しい準大手仮想通貨取引所では対応しきれていないケースも予想されます。
もしFATFの審査でレベルが低いと判断されてしまうと、日本の金融システム全体の問題にもなりかねない危険があります。
FATFの審査手法とは
FATFによる審査はどのような手法が用いられているのでしょうか。
審査手法は以下のように大きく2つに分類できます。
1.技術的遵守状況
TC審査と呼ばれるもので、FATFの勧告がどのぐらい制度化されているかをはかるために、法令や執行することができる法令以外の手段がどのぐらい整っているかを審査します。
日本であれば、2016年に再々改正された「犯罪による収益の移転防止に関する法律」や組織犯罪処罰法、麻薬特例法などがこれにあたります。
2.有効性の程度
有効性審査と呼ばれ、関係する当局や業態の取り組みに必要な成果があがっているかどうかを審査します。
具体的にはマネーロンダリング・テロ支援資金供与のリスクとそれに対する義務の理解、顧客管理と記録の措置、顧客管理不備時の謝絶などがこれにあたります。
なお、2019年10月28日から実施されるオンサイト審査では、特に有効性審査に重点を置いて審査がすすめられます。
前回の対日審査結果と当時の対応
ではFATFによって前回実施された相互審査で、日本はどのような結果になったのでしょう。
前回のFATFによる相互審査(第3次相互審査)は2008年に実施されています。
その際の結果は、要改善とされたものが全49項目のうち25項目ありました。
要改善項目数で順位付けすると、日本は18位という結果で、19位は中国、20位がメキシコの順に並んでいます。
ちなみに中国もメキシコも要改善項目数は25項目でした。
日本はこの結果を受け、2011年に「犯罪による収益の移転防止に関する法律」を改正し、2013年には施行しましたが、改正された内容が十分なものといえませんでした。
2014年6月にはFATFが日本に対し、迅速に立法措置をおこなうことを促す声明を発表したため、その年の11月に上記法を改正して2016年に施行しています。
これはつまり、一度指摘された欠点を補ったつもりであったが、十分なものではなかったために、また指摘されてしまったということです。
第4次審査のこれまでの審査結果
前回のFATFによる第3次相互審査からおよそ10年後の今回の第4次審査は、すでに各国で実施されており、2019年6月時点では23ヵ国での結果が公表されています。
画像引用:財務省国際局 関税・外国為替等審議会
この表の通り、相互審査を受けた23ヵ国のうち、通常フォローアップ国つまり普通にフォローしていけば良いと判断されているのはわずか5ヵ国に過ぎません。
残りの18ヵ国は重点フォローアップ国として今後重点的にフォローしていく必要がある国だと判断されているわけです。
この表を見る限りでは、現時点で最もマネーロンダリング対策とテロ資金供与対策が進んでいるのはイギリスで、次いでスペイン、イタリアの順に並んでいます。
また前回の第3次相互審査で、日本と要改善項目数が同じであった中国とメキシコはあまり良い審査結果だったとは言えない状況に終わっています。
まとめ
今回のFATFによる第4次相互審査はこれまでとは異なり、一般的な金融機関だけでなく仮想通貨取引業者も審査対象になってきます。
金融機関はもちろん前回のような審査結果にならないよう改善してくるでしょうが、予測できないのが仮想通貨取引業者の審査結果でしょう。
日本の仮想通貨取引業者に対する法的規制は、以前と比べて格段に厳しいものになっています。
それは、過去の大きな流出事件などが契機になってはいるものの、規制の厳しさでは世界的に見ても遜色ないもののはずです。
今回の相互審査の結果が、第3次相互審査より大きく改善していれば、日本の取り組み姿勢やこれまでの努力が世界的にも評価されるはずです。
また仮想通貨取引市場においても健全化が進んでいる国として評価されるのではないでしょうか。
審査結果が公表されるのは2020年の夏頃の予定となっています。
結果が判明するまでしばらく時間がかかりますが、日本の金融機関や仮想通貨取引業者の取り組み姿勢を信じて待つこととしましょう。