意識調査で米国人のリブラへの冷めた目が判明
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- 2019.07.26.
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先日掲載したニュース記事「市場関係者への調査でリブラを肯定する傾向」では、日本の金融市場関係者の仮想通貨リブラに対するアンケート結果をご紹介しました。
アンケート結果から、日本人は仮想通貨リブラに対して否定的な人は少なく、どちらかといえば肯定的に見ている人が多いことが分かりました。
ではリブラを計画しているフェイスブックのお膝元である米国の人々は、仮想通貨リブラに対してどのように考えているのでしょう。
日本の金融市場関係者と同じように肯定的なのでしょうか。
米国の調査会社CivicScienceがリブラに関するアンケートを1799人に実施し、その結果は同社のサイトで公開されています。
興味深いそのデータからは、日本との違いが浮き彫りになっています。
アンケートデータと、このような結果が出ている背景などについてもご紹介しましょう。
米調査会社CivicScienceがアンケートを実施
画像引用:CIVICS SCIENCE
米国の調査会社であるCivicScience社が、米国在住の成人1799人に対して、仮想通貨リブラについてのアンケートを実施しました。
その結果についてご紹介します。
仮想通貨リブラとそのウォレットに関する関心度
まず、フェイスブックの仮想通貨リブラと、付随するウォレットに対してどのぐらい興味があるかを尋ねています。
画像引用:CIVICS SCIENCE
アンケートによると、非常に興味があるが2%、幾分かは興味があるが3%、全く興味がないが86%、よく分からないが10%という結果になりました。
程度に違いがあるものの、何らかの興味がある人は全体の5%に過ぎないという結果になっています。
この回答別の年齢データは以下のようなものです。
画像引用:CIVICS SCIENCE
興味がある(Interested)と答えている人のうち、最も多い年齢層は18歳から24歳で、30%を占めています。
また回答別のフェイスブック利用頻度を調べると以下のようになっています。
画像引用:CIVICS SCIENCE
リブラに対して興味がある人のうち、63%がフェイスブックを毎日利用していることが分かりました。
日常的にフェイスブックを利用しているからこそ、リブラに対して興味を抱くのは当然かもしれません。
しかし面白いことに、よく分からない(I`m not sure)と答えている人のうちの56%が、そして全く興味がない(Not at all Interested)と答えている人のうち34%の人達も日常的にフェイスブックを利用しているのです。
これはSNSと仮想通貨とは別の話だと捉えているということでしょうか。
仮想通貨への投資経験と投資する理由
対象者がこれまでに仮想通貨に投資をしたことがあるかどうか、そしてその理由を質問した結果が以下のようなものです。
画像引用:CIVICS SCIENCE
これによると、投資理由の最も大きなものは長期投資(Long-term investment)であり、次いで短期投資(Short-term investment)、政府から独立したものだから(Independent from government)の順になっています。
そしてその後になってやっと簡単で早く、安全に取引できる(Easy,fast,safe transactions)が続いています。
フェイスブックの個人情報保護に対する米国での信頼度
フェイスブックはこれまでに利用者の個人情報流出を何度も起こしており、その保護姿勢が問われています。
そこでフェイスブックの個人情報やデータなどの取り扱いについて、信頼できると思うかどうかを質問しています。
画像引用:CIVICS SCIENCE
フェイスブックの個人情報に対する信頼度は、全く信じていない(A lot)が77%と、大多数の人が信じていないと答えています。
リブラと従来のビットコインなどの仮想通貨に対する信頼度比較
ビットコインやリップルなどの従来からある仮想通貨と比較して、リブラはどの程度信頼しているかを質問した結果が以下のようなものです。
画像引用:CIVICS SCIENCE
これによると、リブラをはるかに信用している(Much more)と答えた人は1%、いくらかは信用している(Somewhat more)と答えた人が1%、どちらも同じ(About the same)は19%、あまり信用できない(Somewhat less)が5%、全く信用できない(Much less)が35%、よく分からない(I`m not sure)が39%という結果になっています。
リブラはほとんど信用されておらず、ビットコインなどの従来から存在している仮想通貨は信頼度が高いことが読み取れる結果になっています。
米国民のリブラに対する冷めた目の理由とは
アンケート結果を見ていると米国民は仮想通貨リブラに対して非常に懐疑的で、信用していない人が非常に多いことが分かります。
どうしてこれほど否定的な見方が強いのでしょうか。
それには、フェイスブックの個人情報漏洩問題が大きく影響しているのではないかと考えられます。
フェイスブックはこれまで何度も個人情報漏洩問題を起こしており、米国では大きな注目を浴びています。
その幾つかについて、簡単に説明しましょう。
アメリカ情報機関への提供
フェイスブック利用者の個人情報が、米国家安全保障局などの情報機関に提供されていることを2013年6月、ワシントンポストによって報道されました。
ケンブリッジ・アナリティカによる流出
2018年3月17日、英国選挙コンサルティング会社のケンブリッジ・アナリティカが、フェイスブックの個人情報を不正に取得し、活用していることが元従業員からのリークで発覚しました。
流出した個人情報の件数は最大8,700万件といわれ、そのうち日本からも10万件が流出していました。
広告主への個人情報提供
2018年6月、フェイスブックが広告主数社に対して個人情報を提供していたとウォール・ストリート・ジャーナルによって報道されました。
広告主には日産自動車なども含まれており、アプリ変更の際、変更完了までの間だけ閲覧できるようになっていたと発表しています。
アクセストークン不正入手による流出
2018年9月28日、アクセストークンを不正入手されたことによって、およそ1,400万人の電話番号や生年月日、住所、勤務先などにアクセスされたとフェイスブックが発表しました。
サイバー攻撃による流出
2018年10月6日、何者かのサイバー攻撃によって、日本人を含むおよそ25万件分の個人情報が流出していると報道されました。
リブラの特徴も影響か
米国の人々の仮想通貨を利用する目的は前述した通り、長期投資が最も多く、次いで短期投資という結果でした。
仮想通貨に通貨としての使い勝手を求める人々はあまり多くありません。
仮想通貨を投資としてとらえるのであれば、値動きの大きなビットコインの方が投資には向いています。
リブラはステーブルコインであり、裏付けが複数の法定通貨や国債であるため、値動きが少ないことを特徴としています。
すなわちリブラは投資目的には使えないからこそ、興味がないという意見が多くなっている可能性も考えられます。
日本のアンケート結果との違い
先日お届けしたニュース記事「市場関係者への調査でリブラを肯定する傾向」では、日本人は比較的リブラに対して肯定的であることをご説明しましたが、米国の調査では逆の結果になっています。
日本人へのアンケートは一般の人ではなく、金融市場関係者に対して実施したものであり、今回のCivicScience社のアンケート対象者とは対象者が異なります。
また質問内容も異なるため、同じ条件とはいえず、比較対象とするのには無理があるかもしれませんが、フェイスブックが本来米国の会社であることや、米国を中心として個人情報が繰り返し流出していることなども影響しているものと思われます。
実際に調査してみなければ分かりませんが、日本人の個人情報に対する意識が米国と異なり、流出に危機感をさほど感じていない可能性もあります。
つまり、フェイスブックに対してそれほど問題意識を持っていないことも原因として考えられるのではないでしょうか。
今後、仮想通貨リブラは世界の規制当局から十分な調査を受け、様々な規制をくぐり抜けていかなければサービス開始に到達できないはずです。
もしサービスを開始できたとしても、当初の2020年後半には間に合わない可能性は高くなりつつあります。
その過程で、日本人や米国人がリブラに対する考えをどう変化させていき、サービス開始直前にはどんな意識を持つようになっているのでしょうか。
リブラに対するニュースから目が離せません。