ECB次期総裁にラガルド氏指名で仮想通貨はどうなる
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- 2019.07.09.
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画像引用:国際通貨基金
ECB欧州中央銀行の次の総裁として、EUがIMF(国際通貨基金)のクリスティーヌ・ラガルド専務理事を指名したことが分かりました。
現在のECB欧州中央銀行総裁であるマリオ・ドラギ氏が2019年10月末で任期を終えるため、次の総裁として指名されたわけです。
マリオ・ドラギ氏の仮想通貨に対する姿勢はどのようなもので、クリスティーヌ・ラガルド氏に総裁が変わることで、仮想通貨に対する風向きはどのようなものになるのでしょうか。
クリスティーヌ・ラガルド氏の仮想通貨に対するこれまでの主義主張などを含めてご説明しましょう。
2019年7月2日EUがECB次期総裁に指名
EU欧州連合首脳がブリュッセルでの会議において、2019年10月末で任期を終えるマリオ・ドラギECB欧州中央銀行総裁の次の総裁として、クリスティーヌ・ラガルド氏を指名しました。
クリスティーヌ・ラガルド氏は現在IMF(国際通貨基金)の専務理事を務めていますが、この指名に対して以下のように答えています。
「欧州中央銀行(ECB)総裁への指名を受けたことを光栄に存じます。ECB総裁への指名を踏まえ、IMF理事会の倫理委員会と協議した上で、指名期間中、私はIMF専務理事としての職務を一時的に手放すことを決めました」
ドラギ現ECB総裁の仮想通貨に対する姿勢
マリオ・ドラギECB総裁はイタリアの経済学者で、イタリア経済財務省の総務局長から、イタリア銀行総裁を歴任し、2011年11月から欧州中央銀行総裁を務めています。
ドラギECB総裁は、これまで仮想通貨やブロックチェーン技術に対して否定的な発言を繰り返しています。
仮想通貨は危険である。
仮想通貨は通貨ではなく資産であり、ユーロは通貨である。
ユーロの後ろにはECBが控えているが、仮想通貨の後ろには何もないと発言しています。
加えて、仮想通貨は我々の経済に影響を与えるほど重大ではないとも発言していました。
以下の画像は否定的発言をしている際の画像で、ちょうど「ユーロの後ろにはECBが控えている」と発言しているシーンです。
画像引用:European Central Bank twitter
欧州全体に大きな影響力を持つECBの総裁が、仮想通貨に対してこのような趣旨の発言をすることは、仮想通貨の発展に少なからず影響を与えているはずです。
ラガルド専務理事の仮想通貨に対する姿勢
クリスティーヌ・ラガルド氏は、パリのロースクール卒業後に修士号を取得。
さらに弁護士資格を取得した後、法律事務所に入所しました。
2005年にフランス政府に入閣し、2007年にはG7における初の女性経済・財政相に就いています。
G20で金融危機対策などに取り組み、2011年のG20(フランスが議長国)では議長を務めました。
2011年7月にIMFの専務理事に就任し、現在二期目に就いていたところでした。
ラガルド氏は仮想通貨に対してこれまで肯定的な発言を繰り返しています。
2018年4月16日付けのIMFのブログで、銀行などの金融機関が仮想通貨に過度に反応していることを危惧しており、政策側が仮想通貨を公正に判断し、革新を妨げることのないよう呼び掛けています。
2018年11月のインタビューでは、国が仮想通貨を発行する可能性を探るべきであり、国が供給する役割を担うこともあり得ると発言しています。
また同月14日に開催されたフィンテック・フェスティバル2018で、中央銀行がデジタル通貨を発行する必要性についても言及しています。
2019年2月にはインタビューを受けたCNNMoneyに対し、仮想通貨に規制が必要かということではなく、いつ規制を導入するかが重要であり、国際的規制の必要性を訴えています。
2019年4月のCNBCによるインタビューでは、ブロックチェーン技術がシステムを揺るがしており、安定が無くなる革新は望まないことを述べるとともに、規制が必要である考えも述べています。
画像引用:CNBC
2019年6月8日に開催されたG20財務相・中央銀行総裁会議のセミナーでは、大手の金融機関がコインを作ることに対して肯定的な意見を述べています。
ただしプライバシーの問題、これは個人情報などを指していますが、この問題が大きくなると懸念材料になるため、安心できるようにする必要があることも指摘しています。
これらの発言を総合してみると、クリスティーヌ・ラガルド氏の仮想通貨に対する考え方は、ドラギECB総裁と比較すると明らかに肯定的です。
技術革新は必要であり、仮想通貨もその流れの中にあるものとして認めています。
ただし野放しにするのではなく、世界的な規制を一刻も早く充実・実施する必要性を訴えていることが読み取れます。
ラガルド氏ECB総裁就任で仮想通貨に進展はあるか
クリスティーヌ・ラガルド氏が専務理事をしていたIMFと、2019年11月に就任する予定のECBの違いとはどんなところにあるのでしょうか。
仮想通貨に対して肯定的なクリスティーヌ・ラガルド氏がECBの次期総裁に就任することで、仮想通貨に否定的なマリオ・ドラギECB総裁とは違う、何らかの進展が期待できるのでしょうか。
まずIMFについて説明しましょう。
IMFには現在189か国が加盟していますが、これら加盟国の経済的安定のために活動する組織です。
加盟国の法定通貨と為替相場を安定化させ、国際収支が赤字になっている国や発展途上国に対する金融的、技術的支援だけでなく、経済危機国に対する金融支援、そして金融的な非常事態の防止をおこなっています。
IMFの活動の中で最も知られているのは、通貨危機や財政危機などに際しておこなう緊急融資でしょう。
では、クリスティーヌ・ラガルド氏が2019年11月に就任する予定のECB(欧州中央銀行)とはどのような役目を果たす機関なのでしょうか。
簡単に説明してしまうと、欧州の通貨ユーロに関する金融政策を実施するEUの主要機関であり、ユーロ圏の中央銀行ということになります。
ECBが最も優先すべきことは、ユーロ圏内の物価の安定です。
物価が安定すれば、欧州通貨であるユーロの価値も安定し、世界的にも信頼される通貨になっていくはずです。
そのために金融政策としてユーロ圏にある民間銀行への政策金利を上下させたり、ユーロ諸国の外貨管理や為替市場への介入、ユーロ紙幣の発行もECBがおこなっています。
IMFとECBはどちらも世界経済に必要な機関であり、単純に比較することはできませんが、IMFが加盟国の経済的安定のために寄与するとはいえ、直接的に金融政策を実施できる立場にはありません。
どちらかというと、監視や分析、助言、推奨などを主としている組織です。
一方ECBは、傘下にあるのがユーロ圏の国々に限定されるものの、中央銀行として直接的に金利を上下させるなど、実行力を備えた機関だといえます。
これらのことから考えられるのは、仮想通貨に対して肯定的なクリスティーヌ・ラガルド氏がECB総裁に就任すれば、同氏の持論である仮想通貨の規制や枠組み作りが促進され、これまでよりも早い時期に実施されるのではないかということです。
まとめ
クリスティーヌ・ラガルド氏の仮想通貨に対する考え方やECBについてご説明しました。
同氏がこれまで述べてきたように、仮想通貨やブロックチェーン技術は、もはや見過ごすことができない段階にあり、今後もこれまで以上に革新的なものが登場してくるでしょう。
フェイスブックの仮想通貨リブラなどもこの一つといえます。
仮想通貨に否定的であったとしても、反発だけでなく、より有効に活用できる将来を模索するべきなのではないでしょうか。
仮想通貨に対して肯定的な考えを持っているラガルド氏がECB総裁に就任することで、これまで指摘していた世界的な規制や枠組み作りが進んでいくはずです。
その時には、仮想通貨が今以上の市民権を得ているのではないでしょうか。