米Fidelityが仮想通貨に付随したサービスを開始
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- 2019.05.15.
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世界有数の資産運用企業Fidelity(フィデリティ)が、仮想通貨事業に本格参入しました。
なぜ資産運用会社が仮想通貨事業に参入するのでしょう。
またどんなサービスを提供し、利用者のメリットはどこになるのでしょうか。
本記事では、Fidelityが実施する仮想通貨サービスについての内容とその背景について解説します。
米資産運用大手Fidelityが仮想通貨事業開始
米資産運用会社のFidelityは、2018年10月にFidelity Digital Assetsを設立し、2019年から機関投資家向けに仮想通貨に関連するサービスを開始しました。
提供されているのは、仮想通貨のカストディサービスです。
カストディとは、一般的に、投資家の代わりに有価証券の管理や保管を行ったり配当金の受け取りを行ったりするサービスのことですが、仮想通貨のカストディサービスもこれと同様に、仮想通貨の保管を代行するサービスのことをいいます。
仮想通貨はデジタルデータでかんたんに保管できそうな感じを受けますが、なぜ保管を代行してもらう必要があるのでしょうか?
実は、仮想通貨の仕組みに秘密があります。
仮想通貨の核となるブロックチェーン技術はインターネットを経由して、誰もが、いつでもアクセスすることができます。
一般的な通貨の場合には、銀行などの預けている第三者機関を介さなければなりませんが、仮想通貨の場合は、資産を保有している人であれば、第三者機関を介することなく、直接ブロックチェーンへアクセスして資産を取り出すことができます。
証券や金のように、資産を保管するための物理的な金庫は必要ありません。
この資産への柔軟なアクセシビリティは他の金融資産よりも非常に魅力的だと言えるでしょう。
その一方で、この高いアクセシビリティが新たなリスクを生んでいます。
ブロックチェーンの資産にアクセスするための「鍵」さえ手に入れることができたら、誰でも、世界中のどこからでも、資産を盗み出せるからです。
実際、高いセキュリティを謳っている仮想通貨取引所においても、「鍵」の保管にたびたび失敗し、悪意のある者によって顧客の資産を流出させてしまっています。
つまり、「鍵」をハッカーから安全に保管することは、容易なことではないということです。
また、このブロックチェーン上の資産にアクセススための鍵は「秘密鍵」と呼ばれますが、再発行することはできません。
この秘密鍵をなくしてしまうことは資産をなくすことと同義な訳です。
仮想通貨を個人で保有するのであれば、ハッキングなどから防御しつつ、災害や火事などでも絶対に紛失しない仕組みが求められるため、個人が仮想通貨資産を安全に保有することは非常にハードルが高いのです。
この労力のかかる仮想通貨資産の保管を代行するのが、Fidelityのカストディサービスです。
Fidelityは、カストディサービスを利用することで、機関投資家が秘密鍵の保管に労力を割くことなく、投資に専念できるようになるとしています。
仮想通貨OTCデスクも開始予定
2019年5月6日のBloombergの報道によると、Fidelityは機関投資家向けにOTCデスクを数週間以内に設置する予定だとしています。
OTCデスクとは、相対取引とも呼ばれ、金融商品の売買を行う当事者同士が直接取引を行うための窓口です。
主に大口取引に利用されますが、取引所のシステムを介さないため、金融商品の相場に影響が出ないとされています。
Fidelityの広報担当Arlene Roberts氏は、「私たちのサービスはビットコインに焦点を当てています。」と回答しており、当面はビットコインのみの取り扱いとなるようです。
このOTCデスクを設立する動きは、仮想通貨取引所において2018年後半から多く見られます。
2018年11月にCoinbase、2019年に入ってからはBinanceやBITTREX、4月には日本の取引所CoincheckがOTCデスクを設置しています。
これはすなわち、機関投資家から仮想通貨大口取引のニーズが増えているということを示唆しています。
仮想通貨取引所がOTCデスクを設置すると、取引所のシステムを介さずに大口取引できるため、その取引所での相場が変動することが少なくなり、結果的に急激な価格変動が起きにくくなります。
急激な価格変動は取引所の処理能力を超える注文が殺到し、ロスカットや約定しないなどのケースも起きてしまいます。
もちろん、意図的な価格操作もしづらくなりますから、取引所にとってもOTCデスクの設置はメリットが大きいでしょう。
Fidelityが仮想通貨サービスを開始した理由
Fidelityが仮想通貨サービスを開始した理由は、平たく言えば「仮想通貨を新しい金融資産」として評価している点にあります。
例えば、Fedelity Digital Assetsの公式ブログにおいては、次のような記述があります。
私たちがインターネットを利用できるようになって以来、Moneyはデジタル化してきました – そして、多くの人がBitcoinネットワークを世界の「Internet of Money」と見なしています。思っているよりもずっと早く私たちの生活にスピードをあげましょう。
引用:The Evolution of Digital Cash -Medium(google翻訳)
新しい技術を備えた仮想通貨は、将来の私たちの生活に欠かせないものになるとして、評価しています。
Fidelityが仮想通貨関連の企業に出資している点からも、仮想通貨市場が将来拡大すると考えていることが分かります。
加えて2018年12月には、米CFTCの規制に準拠した仮想通貨デリバティブ取引所の設立を目指すErisX社のシリーズBの投資ラウンドにおいて、他の有名企業とともに投資をおこない、2019年2月にもブロックチェーンデータを分析するスタートアップ企業Coin Metrics社に対して、190万ドル(約2.1億円)を出資しています。
機関投資家向けのアンケートで半数が好意的
Fidelityが機関投資家向けの仮想通貨に関するアンケートを実施し、実際に機関投資家が仮想通貨に関して高い関心を持っていることがわかったことも、サービスを開始した要因のひとつでしょう。
アンケートは、2018年11月26日から2019年2月8日までの間に、米国の441の機関投資家に対して、調査会社のグリニッジアソシエイツ社に依頼して実施しています。
画像引用:medium.com
これによると、回答をした機関投資家のうち、半数近く(47%)が、仮想通貨を「革新的なテクノロジ」だと認識しています。
そして、ファイナンシャル・アドバイザーと、一族の資産を運用するファミリー・オフィスのそれぞれ74%と80%が、デジタル資産を好意的に見ていることがわかりました。
また、回答者の約22%が、すでに仮想通貨資産を保有しており、そのほとんどが過去3年以内に購入しており、10人中4人の回答者が、今後5年以内に、仮想通貨投資を始めるとしています。
ただし調査対象の76%もの人々が、仮想通貨のセキュリティが最も懸念される事項だと回答しています。
このアンケートから、機関投資家の約半分は仮想通貨を好意的に見ており、7割以上がセキュリティに懸念を持っていることがわかりました。
セキュリティを懸念する回答が多かったことから、機関投資家の不安を取り除くために、仮想通貨の保管を代行するカストディサービスを開始したと考えるのが妥当でしょう。
まとめ
世界有数の独立系資産運用企業のFidelityは、70年以上の歴史を持つ老舗企業です。
この信頼性の高いFidelityが仮想通貨サービスを本格的に開始したことで、機関投資家の大規模な資金が仮想通貨市場へ投入される契機になることが十分に予想されます。
同時に「Fidelityが仮想通貨投資事業を行っている」という事実も、世界中の投資家に大きなインパクトを与えるはずです。
2019年の仮想通貨市場は、資金の投入で盛り上がる可能性が高そうです。