参考にしたい金融庁が公開した仮想通貨の「疑わしい取引」
- 仮想通貨関連
- 2019.05.13.
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- 参考にしたい金融庁が公開した仮想通貨の「疑わしい取引」
2019年4月1日、金融庁は、仮想通貨交換業者も含む金融機関・金融商品取引業者などの特定事業者における「疑わしい取引」の参考事例について、一般に向けた資料を公開しました。
具体的には、個人ユーザーを含む取引の中で、疑わしいとされる参考事例が紹介されています。
ここで言う疑わしい取引の対象となる法律は、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」が該当します。
第8条で規定する疑わしい取引の届出義務を履行する際に、疑わしい取引に該当するおそれのある取引、その他注意すべき取引にどのようなものがあるのか、一例を示したものです。
実際に似たような状況に遭遇した場合に、それが疑わしい取引かどうかを判断するための参考事例と考えればよいでしょう。
今回公表された参考事例を読み解くと、全体的には金融活動作業部会(FATF)の第4次対日審査を踏まえた内容が盛り込まれていたものと推察されます。
金融活動作業部会とは、主にマネーロンダリング対策やテロ資金対策など、世界的な金融犯罪に対する対策につき国際的な協調指導、協力推進などを行う政府間機関のことです。
国際基準の策定の他、加盟している国・地域・機関への勧告を行い、勧告遵守の推奨といった指導的立場を担うこともあります。
日本もまた加入している国の一つであり、今回の対日審査は11年ぶりとのことです。
そのため、主に業者向けの内容が記されているものと考えられがちですが、一般ユーザーにとっても無視できないような内容は多いため、以下にチェックしておきたい内容をまとめてみました。
現金の使用形態に着目した事例について
金融庁が公式サイトで公表している「疑わしい取引」の参考事例としては、第1~第6まで事例が分かれて紹介されています。
「現金の使用形態に着目した事例」は、その中でも基本的な部類に入る事例で、取り扱う現金の額や取引期間などに着目している例がまとめられているようです。
(1)多額の現金(外貨を含む。以下同じ。)により、仮想通貨の売買を行う取引。特に、顧客の収入、資産等に見合わない高額な取引、送金によるのが相当と認められる場合にもかかわらず敢えて現金による仮想通貨の売買を行う取引。
(2)短期間のうちに頻繁に行われる取引で、現金による仮想通貨の売買の総額が多額である場合。敷居値を若干下回る取引が認められる場合も同様とする。
(3)多量の少額通貨(外貨を含む。)により仮想通貨の購入を行う取引。
引用元:金融庁 疑わしい取引の参考事例
上記の内容については、考え方によっては全ての仮想通貨投資家に当てはまる内容と言えます。
レバレッジをかけてFX取引を行うのなら(1)や(2)が、自動売買ツールなどを使っているなら(3)が該当する可能性もあります。
全てが問題視されるとは限らないものの、取引所が設けているルールやマナーに従って投資をしなければ、疑わしい取引として判断されるリスクはあるものと覚えておきましょう。
真の口座保有者を隠匿している可能性に着目した事例について
続いては、口座保有者が本当は別にいて、それを隠している可能性に着目した事例です。
一般ユーザーにとって特に問題視されやすいと思われる事例について、以下にお伝えしていきます。
(3)住所と異なる連絡先にキャッシュカード等の送付を希望する顧客又は通知を不要とする顧客に係る口座を使用した入出金。
(4)多数の口座を保有していることが判明した顧客に係る口座を使用した入出金。屋号付名義等を利用して異なる名義で多数の口座を保有している顧客の場合を含む。
(6)名義・住所共に異なる顧客による取引にもかかわらず、同一のIPアドレスからアクセスされている取引。
(7) 国内居住の顧客であるにもかかわらず、ログイン時のIPアドレスが国外であることや、ブラウザ言語が外国語であることに合理性が認められない取引。
(9)取引時確認で取得した住所と操作している電子計算機のIPアドレス等とが異なる口座開設取引。
引用元:金融庁 疑わしい取引の参考事例
全体を通して顧客情報に一貫性がない場合、疑わしい取引として業者側に判断されてしまう可能性があります。
個人事業主として仮想通貨取引を行っている場合、屋号と本人名とで口座を開設するようなことがあれば、疑われるリスクがあると考えられるでしょう。
また、IPアドレスについて言えば、家族や知人・友人の口座を運用している場合、その状況は疑いの目を向けられるものと解釈できます。
ただし、割り振られるアドレスについては、「グローバルIPアドレス」なのか「プライベートIPアドレス」なのか明記されていないことから、今後新たな事例が出た際に検討する必要がありそうです。
口座利用形態と取引形態に着目した事例について
開設した口座をどのように利用しているのか、あるいはどのような取引を主に行っているのかに着目した事例の紹介です。
以下に、個人として取引することを想定して、主なものを見ていきましょう。
第3 口座の利用形態に着目した事例
(1)口座開設後、短期間で多額又は頻繁な金銭又は仮想通貨の入出金が行われ、その後、解約又は取引が休止した口座に係る取引。
(2)多額の金銭又は仮想通貨の入出金が頻繁に行われる口座に係る取引。
(6)通常は資金の動きがないにもかかわらず、突如多額の金銭又は仮想通貨の入出金が行われる口座に係る取引。
(7)口座開設時に確認した取引を行う目的、職業又は事業の内容等に照らし、不自然な態様・頻度で行われる取引。
引用元:金融庁 疑わしい取引の参考事例
口座の利用形態に着目した事例については、お金の動きが不自然であったとき、疑わしいと判断されるリスクがあると言えそうです。
特に、一度取引を行ってから間が空いているような状況だと、その取引について疑問を持たれる可能性があります。
事業内容に応じた金額については、具体的な職業名と金額の目安が紹介されていないため、実際にいくらの取引があれば問題視されるのかはハッキリしません。
しかし、一介のサラリーマンが何の前兆もなく大金を取引に用いるようになったら、確かに素人目でも怪しいと考えるでしょう。
第4 取引の形態に着目した事例
(1)通常は取引がないにもかかわらず、突如多額の仮想通貨の売買又は他の仮想通貨との交換が行われる口座に係る取引。
(3)本人が保有していることが疑われるほど大量な仮想通貨に係る取引。
(5)金銭の入金又は売却代金の振込銀行口座に第三者名義の銀行口座を指定しようとする顧客に係る取引。
引用元:金融庁 疑わしい取引の参考事例
内容を見る限り、顧客データに即して不自然な取引を「疑わしい取引」と判断しているものと考えられます。
分かりやすいのは第三者名義の銀行口座を指定する場面で、明確な根拠がなければ到底認められないのは、他の金融機関でも同様でしょう。
基本的な使い方をしている限りは、取引の頻度や金額・相手方の情報によって判断される可能性は低いと考えて問題ないものと思われます。
その他の事例について
参考事例として最後に紹介されているのが「その他の事例」で、個人取引を行っている人にとっては、比較的当てはまるケースが多い項目かもしれません。
以下に、一般ユーザーに該当するものとして、特に考えられる事例をご紹介します。
(1)公務員や会社員がその収入に見合わない高額な取引を行う場合。
(13)資金の源泉や最終的な使途について合理的な理由があると認められない非営利団体との取引。
(14)口座開設時に確認した非営利団体の活動内容等と合理的な関係が認められない国・地域又は第三者に係る取引。
引用元:金融庁 疑わしい取引の参考事例
公務員や会社員が億単位の取引を行っていたら、確かに怪しまれて当然かもしれません。
もちろん、そこに至るまでに取引の過程が分かっていれば別ですが、極端に大きな額が動く場合、怪しまれる可能性は高くなるはずです。
非営利団体との取引については、今後仮想通貨の寄付を受け付ける仕組みなどが整えば、増えていくことが予想されます。
しかしその過程で、不審な団体への寄付が発覚することは100%ありえないとは言えませんし、詐欺のような事件も起こるかもしれません。
とはいえ、取引所のルールに従って取引をしている限り、少なくとも自らが不審者として判断されるケースは考えにくいところです。
上記のような点を想定しておけば、口座凍結などの事態を引き起こすリスクは低いと考えてよいでしょう。
おわりに
金融庁が公開した「疑わしい取引」について、個人の一般ユーザーが気を付けたい内容をご紹介してきました。
問題があると判断する点で共通しているのは、一般的に考えにくい規模での通貨量が取引されたり、短期間に大口の取引が複数行われたりと、「不自然さ」を感じさせる取引と言えるでしょう。
公表された項目を見る限り、人の口座を扱っていながら同一のアドレスを使っているケースや、顧客情報に一貫性がない人物の取引などが怪しまれる傾向にあります。
一般ユーザーとしては、取引所のルールに即した取引を心がけ、不審な目を向けられないように意識しておきたいところです。