電子マネーに仮想通貨をチャージできる時代がやってくる
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- 2019.05.12.
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仮想通貨交換業者のディーカレットが、事業説明会の中でJR東日本が発行する交通系のICカード「Suica」への仮想通貨チャージを検討していることを発表し、大きな話題となりました。
産経新聞の取材に対してディーカレットの時田社長は、6月頃を目途に何らかの電子マネーへのチャージを検討していると話しています。
日本国内において仮想通貨が今一つ盛り上がりに欠けるのは、国内で仮想通貨を使用できる環境が整っていないことが一因として考えられます。
そのような状況の中で、利用者の多いSuicaを選んだことは、仮想通貨を日々の生活に普及させようという意思の表れと言えるでしょう。
今後、電子マネーに仮想通貨をチャージする動きが普及するようになると、果たしてどのような時代がやってくるのでしょうか。
今回は、仮想通貨の新たな旗手・ディーカレットにスポットを当てつつ、ニュースを掘り下げていきたいと思います。
仮想通貨が今まで日本で広がらなかった理由とは
そもそも、仮想通貨が実際に世の中に出回らなかったのは、仮想通貨自体の「信頼性」にありました。
国民にその存在が浸透するまでは、日本国内において仮想通貨の立ち位置自体があいまいで、マウントゴックス事件のような悪いイメージが明るみに出たことから、日本では仮想通貨の持つ可能性ごとネガティブなイメージでまとまってしまいました。
もちろん、当時から優秀な管理体制を構築し、2019年現在まで大きな問題を起こしていない仮想通貨交換業者も少なからず存在しています。
しかし、それでも「破綻」や「流出」というキーワードの強さには勝てず、日本人が仮想通貨への不信感を育てる結果につながってしまったと言えます。
日本において法律が施行されたのは2017年になってからで、仮想通貨の誕生から10年近い歳月を経て、ようやく法整備が整えられたという状況です。
そのため、まだ国内でも本格的に仮想通貨を「通貨」としてとらえきれておらず、そのメリットもデメリットも理解している層は少数ではないでしょうか。
一方、仮想通貨の黎明期から決済方法として仮想通貨を導入してきた一部の企業は、その恩恵も少なからず受けてきました。
また、世界的に見れば仮想通貨は自国通貨よりも価値が高く、使い勝手のよい通貨として普及している国もあり、将来的に日本もその恩恵に預かることが自然だと考えられます。
ディーカレットによるSuicaへのチャージが実現すれば、まさにその点を考慮した英断の一つでしょう。
仮想通貨に期待を寄せる企業は多い
仮想通貨を利用することでどのようなメリットが享受できるのか、ディーカレットの視点から紐解いていきましょう。
ディーカレットでの取扱可能な仮想通貨の銘柄は、利用者の多い以下の4つの銘柄となっています。
- ビットコイン(BTC)
- ビットコインキャッシュ(BCH)
- ライトコイン(LTC)
- リップル(XRP)
なお、イーサリアム(ETH)は今夏に取扱が開始される予定で、アルトコインは日本円建取引以外に、BTC建取引も提供することが決まっています。
ディーカレットは、金融庁の認可を受けた新規第一号で、仮想通貨交換業者の登録を完了した業者としては新参者です。
しかしデジタル通貨の取引・決済を担うにあたり、国内を代表する企業19社が出資しています。
その中にはJR東日本も含まれています。
主要企業としては、以下のような名だたる大企業が軒を連ねています。
- 株式会社インターネットイニシアティブ
- 伊藤忠商事株式会社
- 株式会社大和証券グループ本社
- 野村ホールディングス株式会社
- 三井不動産株式会社
- 株式会社三菱UFJ銀行
- 株式会社電通
これだけの企業が出資している以上、大手企業は何らかの思惑があるはずです。
日本円や外貨にとらわれない決済ができることによって、投資以外の実需を満たせると考えるのが自然ではないでしょうか。
投資対象ではない実需としての仮想通貨
それでは、投資対象としてではない、実需を満たす仮想通貨の使い方とは、どのようなものなのでしょうか。
その答えの一つとしてSuicaへのチャージがあるわけですが、「通貨として実際に使われること」をディーカレットは想定しているわけです。
コインデスクジャパンのインタビューにおいて、ディーカレットの白石CTOは次のように述べています。
「実需が見えたときに、初めて本格的な普及の段階に入る。仮想通貨を決済に使えるようにすることで、実需を産み出すことが必要だと考えている。仮想通貨で電子マネーにチャージというのは実需を生むための一部に過ぎない。」
実需の可能性としては、もちろんSuica以外の電子マネーも検討しているものと考えられますし、それ以外に有効な使い方が分かればそちらを優先するのかもしれません。
ただ、ディーカレットがコンセプトとしているのは「全ての価値をつなげて、シンプルに交換する」ことであり、最終的なビジョンとしては「仮想通貨のメインバンク」として機能することを目指しているように見受けられます。
先に挙げた出資先を考えてみると、実に様々な会社が関与しています。
IT・商社・株式会社・不動産・交通など、各業種に関わる大企業が仮想通貨を活用できるインフラに関与すれば、広く一般に仮想通貨の決済サービスを普及させることも、決して不可能ではないはずです。
これらのことから導きだせる結論としては、ディーカレットは単なる仮想通貨交換業者としてだけでなく、その決済サービスを自前で提供することを将来の目標としているのではないかということです。
おわりに
仮想通貨がSuicaなどの電子マネーにチャージできるようになったとき、そこには仮想通貨交換業としての利益だけでなく、決済サービスの運用益も生まれます。
将来的には、価値交換の拡大を促し、製品・素材・エネルギー・不動産などのトークン同士を取引できる「価値交換プラットフォーム」となることを、ディーカレットは想定しているはずです。
その具体例こそがSuicaへのチャージでしょう。
決済システムを想定し、電子マネーへの交換が可能なサービスを提供することは、日本で生活するにあたっての金銭の価値を大きく変えていく可能性があります。
現段階ではモノ・サービスの購入時に仮想通貨を使うと、購入時の価値と支払時の価値との差益が「所得」として税金の対象となりますが、普及が全国的なものになれば、いずれ税制も改正せざるをえなくなってくるでしょう。
国民全員が仮想通貨取引をおこない始めたとしたら、国税庁や税務署ではその流れを全て把握することは現実的に不可能に近いからです。
1億人が1日に行った仮想通貨取引の流れを全て把握し、適切に税額を算出することは不可能であり、法改正の可能性も含め、ディーカレットが提唱する未来は消費者にとって新鮮であり、魅力的に映ります。
仮想通貨の送受については、システム内で通貨取引を円滑に進めるため、複数の通貨を組み合わせた送金・送金途中に通過銘柄を変更して送金できるなど、流動性の向上も考えられています。
人それぞれの仕事や生活の中で仮想通貨が使いやすい存在となり、しかも自由に支払い方法を選べるようになったとき、今までのお金に抱いていた概念は大きく揺らいでくるでしょう。
仮想通貨を電子マネーにチャージできるようになった「その先」が、明るい未来であることを祈りつつ、その動向を注視していくべきでしょう。