ビットコイン3月の取引高低水準の理由
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- 2019.04.28.
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ビットコインの2019年3月の取引高が、2年ぶりの低水準になったことがわかりました。
一時期、あれだけ急騰していた時期があった時には、取引高も大きかったはずですが、これだけ低水準になってしまったのはどうしてでしょう。
本記事では、ビットコインの取引高が低迷した原因について解説します。
2019年3月のビットコイン取引高は低水準に
2019年3月のビットコインの取引高が約2年ぶりに低水準となったことを、米調査機関TradeBlockが発表しました。
ビットコインの2年間における取引高の推移をみてみましょう。
画像引用元:data.bitcoinity.org
上記の画像は、直近2年間の、代表的な仮想通貨取引所におけるビットコインの取引高を月ごとに表したグラフです。
最も右にある、一番背の低いものが2019年3月のビットコイン取引高です。
この2年間の中で最も取引高が小さいことがお分かりいただけると思います。
では、ビットコイン取引高が低水準になった理由は、何でしょうか?
要因として次の3つのことが考えられます。
- 証券市場におけるビットコインの立場が揺らぐ
- 投資家が他の金融商品に鞍替えした
- OTC取引が活発になり、そちらに取引量が移った
それぞれ詳しく見てみましょう。
証券市場におけるビットコインの立場が揺らぐ
1つ目に考えられることは、証券市場におけるビットコインの立場が少し弱まったことです。
例えば、2019年1月には、かねてから米国証券取引委員会(SEC)に申請が出されていたCBOE(シカゴ・オプション取引所)のビットコインETFの申請が取り下げられています。
理由は、米国議会の予算未承認によって政府が閉鎖されたことで、審査されないまま審査期限を迎えてしまうのを防ぐためだったとされています。
最も期待の高かったビットコインETFの申請が取り下げられてしまったことは、多くの投資家の期待に反したことでしょう。
なお、このビットコインETFは、2019年2月に再申請されています。
また、2019年3月には、CBOEのビットコイン先物が6月の限月をもって終了することが発表されました。
ビットコイン先物の提供を終了する理由については明らかにしていませんが、取引量の減少が影響しているようです。
ビットコインのデリバティブ取引のひとつが市場から無くなることは、ビットコインに期待していた投資家にとって、理想的なことではありません。
証券市場におけるビットコインの立場が揺らいでいることが、3月の取引量減少に影響している可能性があります。
投資家が他の金融商品に鞍替えした
2つ目に考えられることは、投資家がビットコインではなく他の金融商品に投資している可能性です。
それを示唆しているのが、2019年1月に放送されたアメリカの経済番組CNBCにおいて、資産運用会社のVan Eck Associates社のCEO Van Eck氏が語った言葉です。
「4000人以上のビットコイン投資家に対し、2019年に最も投資したい金融商品は何かを聞いたところ、“金”と答えた。
“金”はこれまでビットコインに負けていたが、これから逆転するだろう。」
ビットコインは2017年の1年間で25倍値上がりしましたが、その1年後にピーク時の価格から82%減少してしまっています。
一方、金は2017年に4%上昇し、ビットコインが下落した2018年においても2.5%増加しています。
実際にビットコイン投資家が金に投資し始めたのかどうかを確認する術はありませんが、2018年のビットコインの大暴落で気持ちが凹んでしまった投資家が、他の金融商品に鞍替えするのは想像に難くありません。
OTC取引が活発になった
3つ目に考えられることは、OTC取引が活発になったことです。
OTC取引とは、「オーバー・ザ・カウンター」の略で、取引市場を介さないで直接取引者同士が売買を行う仕組みのことです。
OTC取引は、機関投資家や大口の個人投資家が利用していますが、市場に大口の注文が載らないため、市場価格に影響が出ないという特徴があります。
このOTC取引の窓口を開設する大手取引所が相次いでいます。
時系列で並べると、次のとおりです。
- 2018年11月 米大手仮想通貨取引所Coinbase
- 2019年1月 米取引所BITTREX、世界最大規模の取引所Binance
- 2019年2月 韓国の取引所Bithumb
ちなみに2019年4月には、国内取引所CoincheckにおいてもOTC窓口が開設されています。
OTC取引のデータは市場の取引量に掲載されないため、実際にどのくらいの規模の取引が行われているかは不明ですが、一般の取引市場からOTC市場へ取引量が流れていることは間違いないでしょう。
1~3月はレンジ相場が続いた
ビットコインの取引高が低迷していた2019年1月~3月にかけては、一定の価格帯で値動きするレンジ相場が続きました。
レンジの価格帯は36万~38万円で、ボラティリティも小さくなりました。
2019年3月の直近6ヶ月間における、ビットコインのボラティリティの推移を表したグラフをご覧ください。
画像引用元:data.bitcoinity.org
最もボラティリティが小さくなっている部分が3月31日で、画面中央部から左にある山の8合目付近が2018年12月末ごろです。
2019年1月~3月は、いかにボラティリティが小さかったかお分かりいただけるでしょう。
レンジ相場では価格が上昇と下降を繰り返すため、エントリーするタイミングが難しく、トレーダーはポジションを持ちづらくなってしまいます。
レンジ相場ゆえに、トレーダーの取引回数が少なくなってしまい、2019年3月の低い取引高に影響しているかもしれません。
取引所は手数料値上げとアルトコインの充実でカバー
ビットコインの取引高が低迷することは、仮想通貨取引所にとっても、手数料収入が少なくなるため大きな打撃となります。
そこで、仮想通貨取引所の中には、アルトコインを充実させたり取引手数料を値上げしたりするところもありました。
例えば、米大手取引所Coinbaseでは、2019年2月にリップル(XRP)を、3月にステラ/ルーメン(XLM)を上場させています。
また、2019年3月、HitBTCは取引手数料を値上げしています。
以前は、一律「テイカー:0.1%、メイカー:-0.01%」という手数料で、市場に流動性を与えた利用者に対し、リベートを支払っていました。
新しい手数料体系は、取引量に応じて手数料が変動しますが、最も少ない取引量では「メイカー:0.1%、テイカー:0.2%」となっており、以前と同じ手数料を得るためには、30日間で6000BTCもの取引量が必要となりました。
また取引所の中には、OTCデスクの開設や、利用者が保有する仮想通貨を貸し付けて金利を得られるレンディングサービス、POS制の仮想通貨のシステム運用を委託できるベイキングサービスなど、新しいサービスを提供し始めているところもあります。
低迷する仮想通貨市場で収益を確保するため、取引所ではさまざまな努力が行われているようです。
取引高低水準の理由まとめ
2019年3月のビットコイン取引高が低水準になった理由を紐解いてみました。
低水準の理由はご説明したような3つの理由が挙げられますが、この状況が今後どのぐらい影響を及ぼし続けるのかは分かりません。
また何らかの理由で取引高が急上昇することも否定できません。
日本では仮想通貨取引におけるレバレッジの規制など、マイナス要因は多いものの、トレーダーが高いレバレッジで取引できる海外の取引所に流れる可能性も示唆されています。
誰もがマイナス要因であると考えていたものが、ふたを開けるとプラス要因に転じている可能性も十分残されています。
レンジ相場だからとの理由で仮想通貨から目を離してしまうのではなく、動く幅が少ない今だからこそ、しっかりと動きを注視しておくべきかもしれません。