ビットコイン半減期1ヶ月後のマイナーの苦況
- 考察
- 2020.06.25.
- 仮想通貨FXブログ
- ビットコイン半減期1ヶ月後のマイナーの苦況
仮想通貨の代名詞でもあるビットコインが3度目となる半減期を迎えたのは、日本時間の2020年5月12日4時23分でした。
これ以降のマイニング報酬は、それまでの12.5BTCから6.25BTCになったわけです。
半減期はマイニングがしづらくなる環境を作ることでビットコインの希少価値を高める、すなわちビットコイン価格を高める意図があって設定されています。
そのため半減期を経る毎にマイニング競争が激化し、マイナーが苦境に陥ることはある程度予想されていた、既定路線だったといえます。
しかし報道などではマイナーの苦境が頻繁に報道されています。
それはどうしてでしょうか。
また現在マイナーはどのような苦境に陥り、どう対応しているのでしょうか。
これらのことについてご説明しましょう。
特殊な状況の3度目の半減期
ビットコインの半減期はいつ頃訪れるのか、半減期が来るとどうなるかは事前に分かっていました。
おそらくすべてのマイナーが半減期に向けて対策を練っていたはずです。
そしてその対策は世の中に何も異変がなく、平穏無事に過ぎているのであれば効果的であり、それほど問題にならなかったのかもしれません。
しかし2019年後半から世界中を襲った新型コロナウイルスの経済や金融に対する影響は大きく、ビットコインやマイナーにとっても無関係ではありませんでした。
また半減期を過ぎても価格が上昇せず、価格が上昇するどころか、2020年6月25日16時過ぎの時点で98万円台を推移しています。
マイニングで得られる報酬が減っているにもかかわらず、ビットコイン価格も上昇しなければ、マイニングで得たBTCを手放してもそれほど利益が出ない状況になっているのです。
マイナーが送るビットコインが低水準
ブロックチェーンデータ分析企業であるGlassnodeが、マイナーのアドレスから送られたビットコインの7日間平均量が大きく低下していることを発表しています。
以下のデータは2020年5月4日の週から、6月18日の週までにマイナーのアドレスから送られたビットコインのボリュームを示したグラフです。
グラフ内のオレンジ色の折れ線はビットコインが送られたボリュームを示し、黒い折れ線はビットコイン価格(USD)を示しています。
なおグラフ内の点線は半減期のタイミングを示しています。
画像引用:Glassnode
このグラフをみると一目瞭然で、半減期以降にマイナーのアドレスから送られたビットコインボリュームが減っていることが分かります。
半減期当日はビットコインボリュームが2334だったのが、5月20日には1003と半分に減少しています。
ビットコインが低水準になった意味とは
上記のようにマイナーが送るビットコインボリュームが減った理由とはどのようなものが考えられるのでしょうか。
資金に余裕のあるマイナーが継続保有
マイナーにとってマイニング報酬は大きな収入源ですが、ビットコイン価格がそれほど上がっていない現実を考えると、安い時期に売却してしまうと損失になってしまう可能性があります。
もちろんマイナーによって損益分岐点は異なるでしょうが、もし売却することで損失になってしまうのなら、ビットコイン価格がもう少し上昇するまで様子をみようと考えるはずです。
しかしマイナーが様子をみているといっても、長期的にビットコイン相場が強気相場に転じると考えているとは限りません。
あくまでも様子をみようとしていることも十分に考えられます。
またこの方法が取れるのは資金に余裕のあるマイナーだけであり、資金的に日銭が欲しいマイナーは、多少の損失には目をつぶって売却しようとするはずです。
このケースでも、必要最低限の売却にとどめておくことが考えられます。
売却することで価格低下につながる懸念
もう1つ考えられるのが、マイナーが保有しているビットコインを一気に売却してしまうと、ビットコイン価格の下落につながるのではないかと懸念していることが考えられます。
つまり、ビットコイン市場自体にマイナーが保有しているビットコインを売却できるだけの下支えがないと考えているということです。
一気に売却してしまってビットコイン価格が大きく下落すると、一度目の売却時はある程度の価格で売却できても、次に売却する際には大きく値下がりしていてマイナーの損失が大きくなりすぎてしまいます。
すなわち、自分で自分の首を絞めることになりかねないわけです。
ハッシュレートの急激な低下
半減期は、収益性に直接関係のある保有ビットコインを送るボリュームを減らすきっかけにしただけではありません。
ビットコインのマイニングハッシュレートにも大きな影響を及ぼしています。
以下のグラフは、2020年4月27日の週から6月18日の週におけるハッシュレートを示したものです。
画像引用:Glassnode
このグラフで、点線の半減期前は120TH/sだったハッシュレートが、半減期後には90 TH/sにまで落ち込んでいるのが分かります。
そして6月に入ってから回復してきているのは、利益効率が良いか、資金に余裕があって新型マイニングマシンを購入して稼働し始めたなどが考えられます。
2020年6月6日のニュース記事「半減期後のマイナーを取り囲む厳しい状況」内でも、Bitmain社の新型マイニングマシン発表についてご説明しています。
資金力の乏しいマイナーは価格上昇に期待
上記までの説明で分かるように、資金に余裕があり、最新のマイニングマシンを揃えることができるマイナーはマイニング業界で大きく伸びる可能性があります。
一方、資金力のないマイナーは、マイニングしてもなかなか報酬が得られず、しかも損失が出ると分かっていてもビットコインを売却しなければなりません。
このままビットコイン価格が上昇しなければマイニングを停止するか、マイニング業界から撤退することも考えなければなりません。
しかしビットコイン価格が上昇していけば、最新のマイニングマシンでなくても利益を生み出すことはできるはずです。
資金力に乏しいマイナーは、ビットコイン価格の上昇だけが頼みの綱なのです。
特定マイナーが独占することの危険性
ではどうして仮想通貨関連報道で、これほどまでにマイナーに関する報道が多いのでしょうか。
それは特定のマイナーがマイニング量の過半数を超えると、リスクが生じてくるからです。
そのリスクとは51%攻撃です。
ご存知のようにビットコインは非中央集権制をとっています。
そしてマイニングが正しくおこなわれたか、すなわちブロックチェーンのトランザクションが正しくおこなわれたかの承認は、マイニングに参加しているマイナーの多数決で決められています。
しかしその多数決は過半数、つまり51%を占めてしまうと、正しいトランザクションであっても認めないことができ、不正なトランザクションでも正しいと認めることができるのです。
さらに、過去のトランザクションさえも改ざんすることができてしまいます。
こうなっていくと、マイニング報酬を全て独占することも可能になります。
これではビットコインの信頼性は大きく損なわれてしまい、これまで築き上げてきた金融資産としての価値もなくなってしまいます。
ただし、51%攻撃を現実のものとすることはマイニングのコスト面で非効率であり、現時点ではそれほど危険性はないだろうともいわれていますが、可能性はゼロではありません。
まとめ
ビットコインの半減期からおよそ一ヶ月が経った現在の、マイナーが置かれている厳しい状況と、どうしてそのことが頻繁に報道されるのかについてご説明しました。
ビットコインの3度目の半減期は、新型コロナウイルスによって予想外の出来事ばかりが起こってしまいました。
新型コロナウイルスによる経済不況は今後も続いていくはずです。
しかも量的緩和政策などの影響はまだまだ不透明です。
これらがマイナーにどう影響していくのかは見通すことができません。
もちろんビットコイン価格への影響も同様です。
関連する報道には十分注意しておく必要があるでしょう。