機関投資家の仮想通貨取引への参入が加速?
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- 2019.06.22.
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- 機関投資家の仮想通貨取引への参入が加速?
「機関投資家は仮想通貨投資に確実に参入する」。
そう語ったのは、SBIホールディングス株式会社の代表取締役社長CEOの北尾吉孝氏です。
これは2019年6月9日に開催された、SBIホールディングスの株主向けのインフォメーションミーティング時に発言されました。
機関投資家が仮想通貨取引へ参入する根拠について、米国の機関投資家向け調査の報告と株価とは逆の値動きをするため、リスクヘッジとして好まれることの2点を北尾社長は挙げています。
機関投資家に対する調査とはどのようなものなのでしょうか。
また株価とは逆の動きをするためにリスクヘッジできるとは、どのような現象を指し、リスクヘッジできるのでしょうか。
この二点について詳しくご説明しましょう。
機関投資家は仮想通貨投資に前向き
資産運用企業の米Fidelityが2018年11月~2019年2月に行った調査によると、米国の機関投資家による仮想通貨投資は今後5年間で増加する見通しになっています。
441社のうち22%の企業ではすでに仮想通貨投資を実行しており、72%の機関投資家は「将来的に仮想通貨を含んだ投資商品を選びたい」と回答しました。
さらに、10人中4人の回答者が、今後5年以内に仮想通貨投資を始めるとしています。
これらのことから2019年以降、機関投資家が仮想通貨市場に参入し、大きなマネーが流入すると見込まれています。
現在、仮想通貨取引所や資産運用企業による機関投資家向けのさまざまなサービスが増えて続けており、それはこの大きなマネーの流入を見込んでの動きです。
つまり仮想通貨取引所や資産運用企業は、機関投資家が間違いなく仮想通貨取引に参入してくると考えているわけです。
仮想通貨がリスクヘッジに使われる理由
画像引用:GRAYSCALE
米グレイスケール社は、2015年以降に起こった世界的な経済危機における、ビットコインを含む金融資産のパフォーマンスを分析し、ビットコインがヘッジとなる可能性についてレポートを発表しています。
このレポートの中から、最近起こった米中貿易摩擦と、イギリスのEU離脱問題における金融資産の値動きを見ていきましょう。
2019年5月の米中貿易摩擦でビットコインが上昇
暗号資産に基づく金融商品を斡旋する米企業グレイスケールは、2019年5月において、ビットコインが他の伝統的な金融資産に圧勝したと報告しました。
2019年5月は米中貿易戦争の問題が再燃した月であり、同月にはビットコインの価格が大きく上昇しています。
5月5日、ドナルド・トランプ米国大統領は、中国の年間輸入額2,000億ドルに対する関税を10%から25%へ引き上げることを発表。
これに対し、中国は米国商品に対する報復関税を発表しました。
画像引用:Hedging Global Liquidity Risk with Bitcoin-GRAYSCALE
グレイスケールが発表したレポートの中では、5月5日~31日までのビットコインと各金融資産のパフォーマンスを比較しています。
図の下位にある「MSI EAFE Index」以下「Nasdaq Composite」までは各基準で選定した株価指数を表していますが、マイナス8.7%~マイナス4.8%と大きく下落していることから、世界の株価が深刻なダメージを受けていることがわかります。
一方でビットコインは47%ものリターンを得ており、株価とは全く連動していません。
冒頭でご紹介したSBIの北尾社長が述べたように、仮想通貨はむしろ「株価と逆の値動きをする」具体的現象といえるでしょう。
2016年6月のイギリスEU離脱問題でビットコインが上昇
2016年6月、イギリスは「EUからの離脱を支持する」という国民投票の結果を公表し、世界に衝撃を与えました。
発表があった6月24日は様々な法定通貨やリスクが大きい金融資産が売られ、大きく価格が下落しています(下図参照)。
画像引用元:Hedging Global Liquidity Risk with Bitcoin-GRAYSCALE
特に下落率が大きかったのは、英ポンド(GBP)や株式のインデックスです。
資産の逃避先としてよく使われるゴールドインデックスのパフォーマンスは4.7%とプラスでした。
一方ビットコインはゴールドインデックスよりもパフォーマンスがよく、1日で7.1%のリターンがありました。
ビットコインは、イギリスのEU離脱問題が起こった日において、最も優れたパフォーマンスを発揮しており、「株価と連動していない」ことがわかります。
イギリスEU離脱問題は未解決
イギリスのEU離脱問題は、2019年6月現在も世界経済に大きな影を落としています。
当初2019年3月までが離脱の期限だったのですが、EU離脱協定案がイギリス議会によって承認されず、離脱期限は10月31日までに延長されています。
今後、EU離脱問題に関する悪いニュースがあると、国民投票の結果発表と同様に世界経済に深刻なダメージを与える可能性があるため、仮想通貨と株価との非連動性、すなわち仮想通貨価格が上昇する可能性があります。
CMEのビットコイン先物契約数は過去最高を記録
世界最大のデリバティブ取引所であるシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の、2019年5月のビットコイン先物の契約数は過去最高を記録しました。
CMEは機関投資家が使用するプロ向けの取引所で、農作物や原油、債権など様々な種類の先物取引を行えます。
米仮想通貨メディアCoinDeskは、ビットコイン先物の契約数の上昇は「機関投資家の参入が増加した兆し」と見ています。
各取引所は機関投資家向けのサービスを加速
「仮想通貨市場に機関投資家が参入していると見られる」ことについてはお分かりいただけたと思います。
この章では、各仮想通貨取引所や資産運用会社における、機関投資家向けのサービスの拡充について見ていきましょう。
OTCデスク
2018年後半から2019年にかけて、OTCデスクの開設が相次いでいます。
OTCとはオーバー・ザ・カウンターの略称で、取引市場を使わずに直接取引者同士が売買を行うことをいいます。
金額の大きな取引の際に使われるサービスのため、対象となるのは機関投資家や大口の個人投資家です。
2018年には米Coinbase、2019年には米BITTREXやBinance、韓国のBithumb、日本のCoincheckがこれまでにOTCデスクを開設しています。
機関投資家が仮想通貨取引に参入しやすい環境が整ったことも、ビットコインの価格が上昇した一因なのかもしれません。
カストディサービス
仮想通貨のカストディサービスを提供する資産運用企業も増えています。
カストディとは、資産の運用管理を投資家の代わりに代行するサービスのことで、資産運用をするサービスであるため、主な顧客は機関投資家や大口の投資家になります。
一般的には有価証券の管理や保管、配当金の受け取りなどを代行しますが、仮想通貨の場合は投資家の保有する仮想通貨を安全に保管するサービスを提供します。
仮想通貨のカストディサービスを開始したのは、世界有数の資産運用会社Fidelityや米仮想通貨取引所Coinbase、米仮想通貨信託企業BitGoなどです。
なおCoinbaseは、6月13日にカストディサービスの預かり資産額が約13億ドル (約1,430億円)に達し、まもなく20億ドル(約2,200億円)へ到達すると発表しています。
これらのことから、機関投資家の仮想通貨投資ニーズが高まっていることが伺えます。
まとめ
機関投資家が仮想通貨投資に参入している背景には、「仮想通貨の価格が株式や為替などと連動しないこと」があります。
米中貿易戦争が始まり、イギリスのEU離脱協議が長引く中、世界的な金融危機が起こる可能性はより一層強まっています。
だれも世界的な金融危機が起こることを期待していませんが、もし起こった場合は金融市場に大きなショックを与えることは避けられません。
仮想通貨は株式や為替などの資産と連動しないため、金融危機が起こった場合のリスクヘッジとして役立つ可能性があるでしょう。
リスクヘッジの一貫として、ポートフォリオの一部に仮想通貨資産を入れることを視野に入れておかれればいかがでしょう。