英国のブレグジットは仮想通貨の値動きに影響するのか?
- 考察
- 2019.05.13.
- 仮想通貨FXブログ
- 英国のブレグジットは仮想通貨の値動きに影響するのか?
出口の見えない英国のブレグジットですが、4月10日に英国・欧州連合の間で行われた話し合いで「2019年10月31日」までの期間延長が決定されました。
合意なき離脱・離脱の長期延期のいずれを取るのかという問題で、最終的にメイ英首相は後者を選択した格好になります。
英ポンドはボラティリティの高い通貨の一つであり、ブレグジットが決まった後は激しく売られたものの、秩序ある離脱に向かうのではないかとの期待感が高まるにつれて反発しています。
今後、残された時間で最善の選択につながることを祈りたいところですが、依然として政情不安であることには変わりなく、投資家たちはポンドの動きを注視しています。
ここで気になるのが、法定通貨の下落に伴う仮想通貨の値動きです。
仮想通貨は世界通貨としての性質を持っており、少なからず国家間の動きに連動して相場が上下する傾向が見られます。
ビットコインが2018年初頭に大幅な下落を見せたのは、中国が仮想通貨に対して強い規制をかけたことも一因と言われているように、一国の仮想通貨に対する方針がそのまま通貨価値に影響するケースは少なくありません。
ブレグジットも同様で、EUの離脱という大きなテーマがかかっているため、法定通貨である英ポンド・ユーロの価値が揺らいだとき、資金の避難先としてビットコインなどの仮想通貨が選ばれる可能性はあります。
今回は、ブレグジットが仮想通貨の値動きに及ぼす影響について、過去の傾向から考察してみました。
ブレグジットはどのような理由で発生したのか
ブレグジットが問題となっているのは、英国がEUという超巨大経済圏から脱退することについて、その方針が国内で認められるかどうかという点です。
英国民が特に問題視していたのは移民問題をはじめとする不平等問題であり、主に貧しい地域や年配の方が離脱に賛成の意を表明していたようです。
大きな理由としては、リーマンショックに端を発したユーロ危機や、EU内からの移民が急増したことによる混乱が挙げられます。
英国は移民を自国民と同様に扱う方針を決めていたため、それら移民と雇用・公共住宅の確保で競合する労働者・低所得者層との間に亀裂が生じました。
端的に言えば、これは英国政府の失敗であり、そのツケを払う形でブレグジットの動きは発生したと言えそうです。
国民投票の結果を見る限り、国際通貨基金や世界銀行により脱退した場合の多大な経済的損失を警告されても、EU脱退は英国民にとって魅力的だったのでしょう。
一つの国の政情が不安定になったとき、国の法定通貨もまた、その価値に影響を及ぼします。
英ポンドやユーロも例外ではなく、急落の懸念は常に存在しています。
法定通貨には国の信用があるが仮想通貨の場合は?
英ポンドは法定通貨のため、各国の中央銀行の信用を裏付けに発行されています。
これはつまり、国の信用とほぼ同じ意味です。
しかし、仮想通貨は世界中で流通している通貨であり、基本的には国の信用と通貨価値との間に、直接の相関関係はないはずです。
具体的には、仮想通貨自体のセキュリティや流通システムの信用、発行している企業の信用が裏付けとなりそうです。
ただ、これは法定通貨・仮想通貨を単独で見た場合の捉え方であって、国家の信用が何らかの形で揺らいだとき、法定通貨に代わって仮想通貨が価値を持つ可能性は十分にあります。
トルコのように政情不安を慢性的に抱えている国では、自国通貨よりも仮想通貨の方が保有資産として有効であると考えている人も少なくありません。
英国のブレグジットが長引けば長引くほど、同様の理由から国家としての信用が揺らいでいきます。
国民投票でユーロ圏からの離脱を決めてから、議会でどのように離脱するのか方針が決まっていないという状況は、市場がいつ急激に動いてもおかしくない状態とも取れます。
ネガティブな情報がわずかでも流出したら、英ポンドの価値は大きく下がるかもしれません。
そのとき、当座の避難先として仮想通貨が検討される可能性は高いでしょう。
仮想通貨は各国の政情とリンクするのか
仮想通貨の相場は法定通貨と違い、各国の政情とどのようにリンクしているのか、一目見て分かる動きを見せるとは限りません。
今まで仮想通貨に対して有利な政策を講じていた国が突然方針転換するなど、極端な動きが報じられない限り、目に見えて分かりやすいチャートの変化は見られないでしょう。
しかし、仮想通貨は法定通貨や世界の株式市場とまったく無関係なわけではなく、相関関係が見られた例も存在します。
変動要因こそ多数あるものの、一概に無関係とは片づけられないところが、仮想通貨相場の難しいところと言えるかもしれません。
国際金融市場が極端なリスクオフ(安全資産への逃避)に傾いたとき、仮想通貨が連動した下がったケースもあります。
画像引用:COINPOST
上のチャートは、ビットコイン/円のグラフ(青線・赤線)と米ドル/円のグラフ(青線のみ)を同じ画面に反映させたものです。
2019年1月3日は、日本時間の7:30におよそ10,000円ほどビットコインが急落しています。
それとほぼ同時期の世界金融市場を確認したところ、米ドル/円の為替レートが109円台から104円台まで暴落した後反発しています。
これらのチャートの動きを見る限り、今回について言えば価格推移には相関関係が認められます。
新興国であれば、国家の信用がない(それほど強くない)などの理由から、便宜上仮想通貨を利用する可能性はあるでしょう。
また、政情不安が長引きハイパーインフレが起こっているベネズエラなどは、ビットコインを主とした仮想通貨取引が活発化してきています。
先進国では、法定通貨からの避難先としてビットコインが使われるというケースは考えにくいものの、将来的にそうなる可能性がゼロであるとは言い切れません。
もしそうなれば、国家の信用以上に仮想通貨の信用が勝るという状況も想定しつつ、各国のトレーダーが投資を考えるきっかけになるでしょう。
EU離脱再延期が決まった時の仮想通貨市場
ブレグジットによって生まれた先行きの不透明感は、主にイギリス国内経済と関連しています。
例えば銀行・住宅建設業・小売業などの株価や、貿易に関する影響も懸念されていました。
しかし、4月時点ではまだ仮想通貨自体が長い下落傾向に陥っており、今後のトレンドが見えにくかったこともあってリスク回避目的で買われる様子は見られませんでした。
事実、離脱の長期延長が決まったタイミングの相場をチェックしてみると、ビットコインは4月10日から11日にかけて20,000円以上価値が下がっています。
画像引用:bitFlyer
画像引用:bitFlyer
上の二つのチャートを見てみると、4月10日時点での値が589,515円だったのに対し、4月11日時点では560,756円となっています。
このことから、離脱延期が好材料と評価されるとともに、仮想通貨の冷え込みはまだしばらく続くであろうという見通しが立ったものと考えられます。
おわりに
2019年5月時点では、ブレグジットと仮想通貨相場の関連性は、明確には分かっていません。
英ポンドと今後の仮想通貨相場の動きとの関連を知るためには、10月31日の値動きまで待つ必要がありそうです。
今後仮想通貨の価値が安定し、安全資産の一つとみなされた場合、各国の情勢に伴い価値が乱高下する可能性も十分考えられます。
日本もまた例外ではなく、先進国の政情が何らかの理由で不安定になることは、仮想通貨の相場変動リスク要因として押さえておくべきかもしれません。