仮想通貨大量保有者(クジラ)が取引を行うとボラティリティは高くなるのか?
- 投資
- 2019.04.19.
- 仮想通貨FXブログ
- 仮想通貨大量保有者(クジラ)が取引を行うとボラティリティは高くなるのか?
仮想通貨の値動きは、国家が管理する通貨と比べて大きく、それが魅力とリスクになっています。
大きな値動きが起こる理由として考えられているものはいくつかあり、その中の一つに「仮想通貨を大量に保有している投資家の動きが関係している」というものがあります。
こういった、仮想通貨を大量保有する投資家は俗に「クジラ」と呼ばれており、クジラが取引に参加することでボラティリティが大きくなると考えられています。
しかし、仮想通貨は世界中で取引が行われていることから、クジラ以外にもボラティリティを高める理由は複数あるはずです。
事実、仮想通貨のマイニングに積極的だった中国の姿勢が消極的に転じたことも、ビットコインの値段を大きく下げたとの見方もあります。
あくまでもクジラは投資家であって、国家ではないことから、世界規模で見ればそこまで大きな影響はもたらさないのではないかも推察できますが、本当のところはどうなのでしょうか。
また、仮想通貨のボラティリティが上がる理由には、どのようなものが考えられるのでしょうか。
クジラがボラティリティに及ぼす影響は限定的である
まずは本題である、クジラがボラティリティに及ぼす影響について考えてみましょう。
※出典元:ITmediaビジネスオンライン
こちらの資料は、クジラと呼ばれる投資家と思しきウォレットの取引履歴を分析した結果です。
実際のところ、クジラは以下の4種類に分類されています。
- トレーダー
- マイナー
- 紛失
- 犯罪者
トレーダーは、定期的にビットコインの売買・仮想通貨の交換を行っています。
確かに積極的な取引の跡が見られるものの、表を見る限りは、全体で考えるとおよそ1/3という結果に落ち着いています。
続いてはマイナーです。
こちらはもともと、仮想通貨への参入が早く、多くは2017年に売り抜けた層です。
マイナーもまた全体の1/3程度ではあるものの、トレーダーのように積極的に売買には関わっていないものと考えられています。
紛失というのは、要するにパスワードが分からないなど、何らかの理由でウォレットにアクセスできないユーザーが該当します。
比率は意外と多いものの、アクセスできないために動きがなく、取引に影響を及ぼす可能性は低そうです。
最後に犯罪者ですが、グラフの中では最も低い割合です。
犯罪者はマネーロンダリング目的で仮想通貨を使うことがありますから、そのあたりが関係しているものと推察されます。
このように、クジラの動向を分析してみると、積極的な売買を行っているクジラは全体のおよそ1/3であり、ボラティリティに強大な影響をもたらすとは考えられないでしょう。
仮想通貨のボラティリティを高めている理由
クジラが仮想通貨のボラティリティを高めている可能性は、それほど高くないことが分かりました。
それでは、実際に仮想通貨のボラティリティを高めているのは何なのでしょうか。
専門的な見解はいくつか言及されているものの、やはり根本的な理由としては、あくまでも「仮想」の存在であることに原因があります。
仮想通貨は、投資対象となる通貨ではあるものの、一般的に市場に流通している円やドルとは、根本的に違います。
一言で表現すると「生活感」を反映した通貨ではないのです。
日本人を例に取ると、多くの企業で支払われる給与の通貨単位は「円」です。
それを基準に、人々は食物や衣類・家電品などを購入したり、株や不動産を購入したりします。
使うことによって得られるメリットがはっきりしていて、なおかつ円という通貨を人々が信頼しています。
それゆえ、収入としての共通理解が国民の中で確立していて、人を雇用する手段(価値を示すもの)として妥当性を持っているのです。
しかし、仮想通貨にはそのような性質がありません。
保有しているから配当がもらえるわけでもなく、通貨の価値の上がり下がりは相対的なもので、国や組織による保証が確実なわけではありません。
そもそも、ビットコインが誕生した経緯自体、かなり謎に包まれています。
これからどうなるかは分からないものの、生みの親であるサトシ・ナカモトが誰なのかは明らかになっていませんし、ビットコイン自体が「国の管理を離れた自由な通貨」を作る目的で発行されていますから、価値を正確に測る指標がありません。
市場の動きのみが価値であり、誰もその通貨価値を管理することができません。
市場に価値を委ねるほかないのが現状というわけです。
監視や規制が追い付いていないのも、ボラティリティを高める要素
取引の規模が世界中に拡大した仮想通貨は、そのスピード感に各国政府の対応が追い付いていないのが現実です。
一国の政府が厳格な規制を設けたとしても、仮想通貨業者にとってそれが障害になるのなら、違う国に行けばよいと業者が移動しています。
規制をかけることで、かえって規制がかけられなくなり、一部の悪意ある人たちに市場操作されるリスクも高まります。
また、毎年のように起こっているハッキング騒ぎや取引所の撤退・廃業は、投資家に「仮想通貨はリスクの高い取引」と感じさせる要因になっています。
政府や組織によって何らかの保証がなされない限り、ファンド大手が取引に参入する動きは考えにくいのです。
とはいえ、機関投資家たちが全く仮想通貨にノータッチというわけではなく、ベンチャー企業やヘッジファンドは、やはり仮想通貨への興味を抱いています。
しかし、先に挙げたような理由から、消極的な姿勢を崩していません。
事実、仮想通貨のETF・投資信託の話と言うのは、なかなか話題に上がってきません。
もちろん、仮想通貨は個人取引が盛んなジャンルということもあるのでしょうが、それほど組織的な動きの勢いが強いわけではないようです。
仮想通貨は、長期的な投資対象になり得るか
仮想通貨は、必ずしもクジラのトレードだけがボラティリティに影響を及ぼすとは限りません。
また、仮想通貨を大量に保有していたことで豊かになったマイナー・トレーダーも少なからず存在していることから、将来的に値動きが落ち着く可能性は十分あります。
また、仮想通貨は長期的な投資対象としては考えにくい投資対象です。
というのも、仮想通貨の取引が始まって以来、その保有に重きを置く層が極端に少ないからです。
仮想通貨がこのような存在になってしまった理由として考えられるのは、仮想通貨を作ったのが投資家ではなくエンジニアだったことかもしれません。
サトシ・ナカモトの正体がはっきりしていないので何とも言えないところではあるものの、高度な技術・発想を具体化できたからこそ、ブロックチェーンの概念は生まれました。
よって、仮想通貨の生みの親は、どちらかと言えばエンジニア寄りの考え方をしていたものと推察されます。
ただし、ジョージ・ソロスのような世界的に有名な投資家も仮想通貨の参入を決めていることから、将来的に市場が成熟する可能性も十分にあります。
そのときにこそ、長期保有を目的とした仮想通貨の取引が本格的に始まるかもしれません。
おわりに
仮想通貨のボラティリティを高くしているのは仮想通貨大量保有者(クジラ)であるという考えは、必ずしも当てはまらないことが分かりました。
しかし、今後大手ファンドや有名な個人投資家が仮想通貨に参入することで、一時的に激しくなることも予想されます。
その一方で、仮想通貨の規制が適切に施行されれば、その過程で適正価格が決まることも十分考えられることでしょう。
ボラティリティについては、今後も注視していく必要がありそうです。