米仮想通貨FX業者がCFTCに現物決済ビットコイン先物取引を申請
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- 2019.05.07.
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2019年4月15日、仮想通貨デリバティブ商品を提供するLedgerX社のCOO・Juthica Chou氏は、現物決済によるビットコインの先物取引を米CFTC(商品先物取引委員会)に申請中であることを発表しました。
CFTCの承認が降りれば、ビットコインの現物決済による先物取引やスワップ取引、オプション取引などのサービス提供をスタートすることができます。
なお、これらの取引は「Onmi」という名前の新しい取引所で展開される予定になっています。
LedgerX社がビットコイン先物取引の現物決済をCFTCに申請した内容や狙いはどのようなものなのでしょう。
また現物決済によるビットコイン先物取引とは具体的にどういうことで、メリットにはどのようなことがあるのでしょうか。
詳しく解説していきましょう。
仮想通貨デリバティブ商品や投資判断材料を提供するLedgerX 社
そもそもLedgerXとはどんな会社で、どんな仮想通貨サービスを提供しているのでしょうか。
まずはLedgerX社の仮想通貨分野における取り組みから説明しましょう。
LedgerX社はアメリカのニューヨーク州にあり、仮想通貨デリバティブ商品を提供しています。
米国商品先物取引委員会(CFTC)によって「デリバティブ決済機関(DCO)ライセンス」と「スワップ執行ファシリティ(SEF)ライセンス」をすでに取得済みで、2018年5月には世界初となるビットコイン貯蓄用口座サービスを開始しました。
続く2019年1月には、ビットコインの価格変動幅(ボラティリティ)を示す指数「LedgerXボラティリティ指数(LXVX)」を発表するなど、仮想通貨投資家がより良い投資できるための判断材料報の提供もおこなっています。
さらに2019年2月5日は、ビットコインをマイニングしている人や組織(マイナー)に支払われる報酬が半減する日を予測し、その予測日に関連付けたデリバティブ商品を発表して注目を集めました。
LedgerX社はこの商品で、マイナーにとっての経済リスクに対応する姿勢を示しました。
参照元⇒Forbes LedgerX Launches First CFTC-Regulated Bitcoin Savings Accounts
参照元⇒THE BLOCK LedgerX rolls out LXVX, a volatility index for bitcoin
参照元⇒LedgerX A New Type of Contract. For a New Type of Asset.
現物決済ビットコイン先物取引のライセンスを申請中
2019年4月15日、LedgerX社の共同創設者兼COO・Juthica Chou氏は、ブロックチェーンと仮想通貨に関する情報メディア『THE BLOCK』のインタビューに対し、「ビットコインの現物決済による先物取引を計画しており、CFTCにライセンスを申請中である」と語りました。
Chou氏によると、現在同社は公認取引所(Designated Contract Market)としての認可を得る為に、商品先物取引委員会(CFTC)にライセンスを申請中であるという。申請がCFTCに承認されれば、同社は「Omni」という名前の新しいプラットフォームを用いて先物取引やスワップ取引、オプション取引などのサービスを展開する予定だ。
引用元⇒マネックス仮想通貨研究所 LedgerX社が現物決済のビットコイン先物取引を計画
引用文にあるとおり、現物決済のビットコイン先物取引は、Omniという新たなプラットフォーム上で提供される予定です。
画像⇒LedgerX公式サイト
LedgerX社は個人投資家層の需要を発掘する狙い
ところで、従来のLedgerX社の戦略は、機関投資家をターゲットにしたものがほとんどでしたが、ここ数ヶ月で戦略のターゲットを機関投資家や大手投資家から個人投資家へと移行しつつあります。
その背景には、「仮想通貨市場が成熟しきっていない今の段階で、機関投資家だけをターゲットにするのではなく、個人投資家層にチャンスを見出していきたい」との狙いがあります。
下記は、LedgerX社の戦略方針変更についてのChou氏の言葉です。
現時点では、まだまだビットコインの市場規模が小さいので、機関投資家に限られるのはビジネス上、得策ではない。これまでとは異なる側面から機会をうかがっている。
引用元⇒ザイ・オンライン 米CFTC規制下の仮想通貨デリバティブ企業、「現物決済」のビットコイン先物取引を申請【フィスコ・ビットコインニュース】
ビットコイン先物取引を上場させた取引所
これまでにビットコイン先物取引を上場させた取引所としては、シカゴ・オプション取引所(CBOE)とシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)があります。
2017年12月に世界初のビットコイン先物取引上場を果たしたCBOEに引き続き、同年同月CMEが上場を果たしました。
しかし2019年3月に入り、CBOEがビットコイン先物取引上場の見直しを検討していることが明らかになりました。
背景には、ビットコイン先物取引の取引高減少や、ライバル取引所CMEの追い上げがあります。
上場当時に最高値圏にあったビットコイン価格の下げに伴いCBOEの同先物の取引高は当時の4分の1程度に減り、ライバル取引所にもおされている。
引用⇒日本経済新聞 ビットコイン先物の上場見直し検討 シカゴの取引所
CBOEの公表した資料によれば、「既存の先物に関しては取引を継続するが、新たな限月者は加えない」ということです。
限月とは建玉が満期を迎える月のことで、限月者とはそれを持つ人のことです。
つまり、新しい建玉を持つ人をもう作らないという意味です。
発表の通りであれば、6月19日に満期を迎え取引を終えることになります。
ビットコイン先物取引を現物決済するメリット
ここまではビットコイン先物上場について説明させていただきました。
ではビットコイン先物取引を現物決済することには、どんなメリットがあるのでしょうか。
まず、現在CBOEやCMEが取り扱っているビットコイン先物取引は「現金決済」であり、今回LedgerX社が申請しているビットコイン先物取引は「現物決済」であるという違いを理解しておいてください。
文字通りですが、現金決済は資金を現金(法定通貨)で手に入れることになりますが、現物決済では資金をビットコインで手に入れることになります。
そして、ビットコイン先物取引を現物決済することで期待されるメリットとしては、次の2つがあります。
- 仮想通貨デリバティブの不正リスク軽減
- ビットコインの需要を高めることができる
1つ目の不正リスク軽減について、もう少し詳しくご説明しましょう。
現在の仮想通貨マーケットは国ごとに法的規制が異なり、不明瞭な部分も今なお多くあります。
そのため、現金化のプロセスで不正操作もおこなわれやすいとの指摘があるのです。
たとえば、先物契約の期限間近で清算値を不正に操作する典型的な手口「バンギング・ザ・クローズ(banging the close)」については、ビットコイン先物取引が上場した際にも指摘された懸念事項でした。
こういった現金決済で起こりうるリスクへの懸念を現物決済で軽減することで、仮想通貨デリバティブの信頼性向上や成長を見込めるわけです。
これが現物決済に期待される大きなメリットです。
まとめ
LedgerX社がビットコイン先物取引の現物決済を検討する背景には、「機関投資家だけをねらったビジエスは得策ではない。これまでと違う側面、つまり個人投資家を戦略のターゲットとして機会をうかがいたい」という狙いがあります。
もしCFTCの承認が下りてビットコイン先物取引の現物決済がスタートすれば、現金決済と比較して不正操作リスクを軽減でき、それが仮想通貨デリバティブに対する信頼性向上につながっていくのではないかと期待されています。
投資家や取引所などの仮想通貨マーケットに参加している人々にとって、不正操作がしづらい環境を一刻も早く築くことは非常に重要な課題です。
信頼性の向上ができれば、市場の規模拡大が見込めるからです。
それが実現できれば、改めて機関投資家をターゲットとした戦略が展開されることになり、冷え込んだ仮想通貨マーケットも再び盛り上がってくるでしょう。
LedgerX社の申請が今後どのような展開になっていくのか、注視する必要があるでしょう。