BinanceがビットコインSVを廃止
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- 2019.04.30.
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世界最大規模の仮想通貨取引所であるBinance(バイナンス)が、仮想通貨ビットコインSVの上場を2019年4月22日付で廃止すると発表しました。
Binanceの公式サイトでは、もし仮想通貨・トークンが一定の基準を満たさない、もしくは業界の変化などがある場合には、上場廃止を検討すると説明されていました。
上場廃止という状況はトレーダーにとってかなりのインパクトがありますが、Binance側としてもどうにも我慢がならなかった事情があったと推察されます。
というのも、ビットコインSVはいろいろと問題のあった人物がチームの主要メンバーとなっていたことから、広い意味で信用を失いかねない通貨だったのです。
今回は、BinanceがなぜビットコインSVを廃止するに至ったかの経緯と、今後Binanceは取引所としてどう評価されていくのかについてご説明します。
BinanceのCEOの怒り
Binance公式サイトにおいて、ビットコインSVを上場廃止した理由がいくつか箇条書きされています。
※引用元:Binance
その中の一つに、倫理的でない・詐欺にあたる行為をビットコインSV側がおこなったとの記述があります。
これだけを見てみると、チーム側で仮想通貨の値動きを操作したかのような印象を与えがちですが、BinanceのCEOであるジャオ・チャンポン氏が指摘した点は少しニュアンスが異なるようです。
問題としていたのは、ビットコインSV側にいた、ある主要メンバーの存在でした。
そのメンバーとは「クレイグ・ライト」氏のことで、仮想通貨の世界では名の知られた存在でした。
名の知れたといっても、それは彼の功績によるものではなく、彼が喧伝したある内容によるものでした。
クレイグ氏は、自分自身をビットコインの開発者である「サトシ・ナカモト」であると、複数のメディアで自称していたのです。
サトシ・ナカモトはクレイグ氏?
実は、サトシ・ナカモトの正体は誰なのか、本当のところは未だ分かっていません。
あくまでも論文からその存在が垣間見えるだけですし、仮名だったとすると、そもそもなぜ仮名で投稿せざるを得なかったのかもよく分からないからです。
名前からすると日本人らしいことが分かるものの、サトシ・ナカモト名義でのWEB上の発言はわずかなもので、本当に日本人かどうかも、あるいはチーム名なのかも分からないというのが本当のところです。
また、クレイグ氏の近くには、不穏な空気が流れています。
※出典元:bitcoin.jp
bitcoin.jpによると、クレイグ氏はビットコイン信託をねつ造した不正が発覚し、およそ4億5000万円の支払い命令が出されていたことが分かっています。
これは、オーストラリア税務局の減税制度を利用してお金を騙し取ろうとした行為だと説明されています。
この事件の後、クレイグ氏はサトシ・ナカモトを自称して、メディアに登場するようになります。
また、ブログポスト・PGP鍵の改ざんや、契約書・メールの偽造も明らかになりました。
それ以外にも、クレイグ氏がサトシ・ナカモトとは違う旨の反証が、各種コミュニティから徹底して行われることとなりました。
こうして仮想通貨業界では、クレイグ氏は「詐欺師同然」であるとの評価を受けることになったのです。
ABCとSVの争いがビットコインキャッシュの価値を揺らがせた
ビットコインSVが廃止された理由は、こういったクレイグ氏の人物評によるものが大きいとされていますが、その他にも要因はいくつかあります。
その中でも大きかったのが、ビットコインABCとビットコインSVという、二つのチームの争いです。
ビットコインキャッシュがアップデートの時期を迎えていたころ、新しい技術の実装が予定されていました。
WHCとDSVという二つの技術が目玉となっていて、機能の拡張が期待されていたのです。
この機能拡張路線を提示していたのがABC側だったのですが、クレイグ氏を主要メンバーとしたSV側は、ビットコインが持つ本来の仮想通貨の傾向から離れる可能性があるため、シンプルにすべきだという提案をしました。
同じ通貨の今後の流れが二つに分かれたことで対立構造が生まれ、その後いわゆる「ハッシュ戦争」という事態を招くことになります。
ハッシュ戦争とは、ハッシュパワー、すなわちブロックチェーンをどれだけ長く作れるかを決める戦いのようなものです。
この勝負に勝つことができれば、実質ビットキャッシュの方向性が決まるということもあって、戦いはヒートアップしていきます。
最終的にこの勝負はABC側に軍配が上がり、ビットコインキャッシュ市場も安定に向かうことが予想されましたが、ビットコインSV側も新しい通貨として上場することになりました。
つまり、対立の火種が完全に消えたわけではなかったのです。
戦う者同士が上場していると不測事態が生じやすい
一度対立構造を生んだ者同士が同じ土俵にいることを、仮想通貨の投資家たちは決して良く思いません。
争いが起こってしまうと、ブロックチェーンの承認率をどちらかのグループが独占する可能性があります。
承認率を独占されてしまうと、その通貨の信用性が損なわれることにもつながりかねません。
一般の投資家にとって、そんなことで仮想通貨の信用がなくなって相場が下落してしまうことは、当然受け入れられません。
もちろん投資家を相手にしている取引所としても、その状況は看過できません。
しかも、問題を引き起こしている人間の素性がどうやら怪しいとなると、そこに関与している・せざるをえない通貨自体も怪しくなってきます。
日本円が長年にわたり信用を得ているように、仮想通貨もまた利用者からの信用が必要なのです。
こうして、ジャオ氏は不審な仮想通貨としてビットコインSVをカテゴライズし、廃止決定の裁定を下したのです。
ビットコインSV上場廃止によるBinance側のメリットとは
サトシ・ナカモトという存在を侮辱したことに対する怒りが、ジャオ氏にどのくらいあったのかは分からないものの、他にもビットコインSVを退場させる理由はいくつかあったものと考えらえます。
まず廃止を決定した段階で、仮想通貨取引所の最大手としての面目を保つことができ、同時にそれがメリットとなりました。
つまり、怪しさ満点の通貨を上場廃止することで、Binance自体が健全化されたことをアピールできるわけです。
次に、ビットコインSVが何らかの問題を引き起こす前に、自主規制をかけた点も信用性を高めることにつながりました。
おそらくは、仮想通貨への規制を強める国々に対してアピールするねらいもあり、「ここまでやる会社なら信用できるだろう」という印象を与えることができます。
仮想通貨取引所全体の中でもこの動きは非常にセンセーショナルで、今後はBinanceが仮想通貨取引所のリーダー的存在になっていくことが十分予測できます。
また、時代の波に乗れない取引所は、次々に廃業していくことが予想されるのではないでしょうか。
おわりに
ビットコインSVという、いわば「いわくつきの通貨」は、仮想通貨取引所の最大手から姿を消しました。
この事実を仮想通貨に関わる全ての人たちが、ビットコインSVの信用性が低いと判断するか、それともBinance側が自社の信用性を高めるために利用したと受け取るかによって、仮想通貨の将来に大きく影響するはずです。
仮想通貨の信用性を考えたとき、残念ながら全世界において、手放しで支持されているとは言えません。
しかしその信用性を高めていくことができるかどうかは、仮想通貨に関わる全ての人がどう行動するかによって決まってくるでしょう。
今回のBinanceの決断が、仮想通貨の将来に良い影響を与えるものと信じたいと思います。