カナダ仮想通貨クアドリガCX、創設者死亡で凍結状態
- 取引所
- 2019.04.29.
- ニュース
- カナダ仮想通貨クアドリガCX、創設者死亡で凍結状態
カナダの仮想通貨業者クアドリガCXにおいて、創業者であるジェラルド・コットン氏が死亡した影響により、取引所が凍結されています。
この事件については多くの報道がされていますが、多くの謎がいまだに解明されていないようです。
本記事では凍結された原因と、この事件から見えてくる、今後取引所を利用するときに注意すべきことについて解説します。
創設者死亡で仮想通貨を引き出せず
2019年2月1日、カナダの仮想通貨取引所クアドリガCXが、1億9000万カナダドル(約158億円)分の仮想通貨にアクセスできない状態であることがわかりました。
2013年に設立したクアドリガCXは、ビットコイン・イーサリアム・ライトコイン・ビットコインキャッシュをカナダドルや米ドル建てで売買できる取引所です。
アクセスできない理由は、創設者の死亡によりコールドウォレットへアクセスするための秘密鍵が失われたからです。
秘密鍵とは、仮想通貨を移動する際に必要となるパスワードのようなものであり、どんな手段を使っても再発行することができないため、この秘密鍵を失うことは仮想通貨資産を失うことと同義です。
そもそも、コールドウォレットへアクセスするための秘密鍵をジェラルド・コットン氏一人が管理していたとのこと。
ジェラルド・コットン氏は、インドの児童養護施設でボランティア活動中にクローン病の合併症を発病し、死亡したことが公式に確認されています。
さまざまな疑惑が浮上
この「創設者死亡により顧客資産にアクセスできなくなった」出来事には、様々な立場の人々から疑惑の目が向けられています。
疑惑のひとつは、「資産が入っているとされるコールドウォレットはそもそも存在しない」というものです。
2月3日、ツイッターアカウントGOAT@ProofofResearch氏はブロックチェーン上の数十のアドレスを調査した結果として、「ビットコインのコールドウォレットは存在しないようだ」とコメントしています。
また、MyCryptoのTaylor Monahn氏は、クアドリガCXで使用されている主要のイーサリアムアドレスを評価した結果、「クアドリガCXにはイーサリアム用のコールドウォレットは無い」と述べました。
2つ目の疑惑は、「(コールドウォレット以外の)ほかのアドレスに資産があるのでは」というものです。
前述のツイッターアカウントGOAT@ProofofResearch氏は、「クアドリガCXはPoloniexやKraken、Binance、Bitfinex、Huobi等の取引所に資金を送金している」と言及しています。
上記の取引所に送金している件について、KrakenのCEO Jesse Powell氏が「クアドリガCXに属しているだろう何千ものウォレットアドレスを把握している」とTwitterでコメントしています。
3つ目は、「本当は秘密鍵の所在を知っている人がいる」というもので、この疑惑については、2月16日にBloombergが報じています。
2014年2月に行われた「True Bromance Podcast」のインタビューにおいて、ジェラルド・コットン氏は秘密鍵を失う危険性について語っており、「ペーパーウォレットはビットコインを保管するために最適なウォレットである」と述べています。
ペーパーウォレットとは、秘密鍵を紙に印刷して保管する方法のことです。
さらに彼は、「ハッカーが自分のサイトに侵入したとしても、秘密鍵はコンピュータ上に保管されていないので仮想通貨資産は安全だ」とコメントしています。
このインタビューから、2014年当時は、コットン氏が秘密鍵をペーパーウォレットへ保管していたであろうことが想像できます。
したがって遺族や会社関係者が、ペーパーウォレットが保管されているのを知らない、もしくは知っている可能性があるとBloombergは言及しています。
そしてジェラルド・コットン氏は、死亡する12日前に莫大な資産について記載した遺言書を提出しており、個人資産を妻に残しています。
このことも多くの疑惑を生んでいます。
その後の経緯
先述したさまざまな疑惑について、公式にコメントは出されていません。
そして4月8日、ノバスコシア州最高裁判所は、クアドリガCXの破産手続きの開始を決定しました。
クアドリガCXを再開する目処は立たず、閉鎖されることとなります。
管財人のアーンスト・アンド・ヤング(E&Y)は、他の仮想通貨取引所等から資産の回収に取り組んでいるとしていますが、どれくらいの金額を回収できるかについてはコメントしていません。
また、裁判所は死亡したコットン氏の妻ジェニファー・ロバートソン氏の資産凍結を決定しました。
その理由として、クアドリガCXの資産をジェラルド・コットン氏が乱用した可能性があるとしています。
2019年4月29日現在も破産手続きは進行中です。
クアドリガCX事件の問題点
創業者死亡で仮想通貨資産を取り出せなくなってしまったことの大きな問題点は、何でしょうか?
一言で言えば、バックアップがなかった点です。
具体的には、秘密鍵のありかを知っている人が創業者一人しかいなかったことでしょう。
一般的な感覚でいうと、会社の経営者としては「ありえないこと」です。
クアドリガCXはジェラルド・コットン氏が一人でほとんど全てを管理していたようなので、自分以外の人に秘密鍵のありかを教えるリスクのほうが高いと感じていたのかもしれません。
もしも彼にアドバイスしてくれる人がいれば、また日本の金融庁のように仮想通貨取引所の運営を指導してくれる組織が存在したとしたら、違った結果になったでしょう。
そういった意味では、日本の取引所が金融庁から規制強化されていることは、利用者にとって良いことなのかもしれません。
仮想通貨取引所利用者が気をつけること
このクアドリガCXのニュースから、私たちが学べることは次の2つです。
- 取引所ではなく、自前のウォレットに通貨を保管する方が安全な場合がある
- 自分に万が一のことがあった時のことを考えておく
1つ目は、自前のウォレットで通貨を保管したほうが、安全な場合があるということです。
私たちが仮想通貨資産を保管するとき、「取引所のウォレットを利用する」か「自前のウォレットを準備する」の2種類の方法を選べます。
仮想通貨取引所へ資産を預けるのは、管理の手間がなく非常に楽ですが、クアドリガCX事件のように仮想通貨取引所の都合で通貨を取り出せなくなってしまうリスクがあります。
一方、自前のウォレットで通貨を保管すると、取り出せなくなるリスクはありません。
仮想通貨取引所には取引に使う数量分だけの通貨を入金しておき、残りは自分のウォレットで保管するのが最も安全です。
ハードウォレットというUSB型のウォレットが市販されていますので、ぜひ使ってみることをおすすめします。
2つ目は、自分に万が一のことがあった場合にどうするかを考えておくべきということです。
もし自分の家族に仮想通貨資産を残したいのであれば、仮想通貨の保管場所や秘密鍵、数量等について家族にわかるように記載しておくべきです。
また、仮想通貨以外でも、自分がオンラインで利用している金融サービスをまとめておくとよいかもしれません。
例えば、ネット証券やネット銀行、保険会社、ロボアドなどです。
もし、利用している金融サービスについて家族が把握していなかったら、万が一の後にもそのまま運用され続けてしまいます。
自分の資産を安全に守るために
カナダの仮想通貨業者クアドリガCXの凍結について解説しました。
謎は多く、事件後、時間が経った現在も真実は見えてきていません。
おそらく今後も謎は解明されることはないかもしれませんが、今回の事件は仮想通貨取引や仮想通貨FXを使用する際に気を付けておくべきことを教えてくれたのではないでしょうか。