Bybitが社会的損失システムを採用しない理由とは?
- 独自連載
- Bybit特集
- 2019.04.29.
- 特集
- Bybitが社会的損失システムを採用しない理由とは?
社会的損失とは、ある事象によって社会全体に損害が及ぶことを指し、環境経済学においては重要概念となっています。
この概念は多くの仮想通貨取引所にも取り入れられており、収益を得ている全てのユーザーで総契約損失を補うというものです。
Bybitでは考え方の違いからこのような社会的損失システムを採用しておらず、別の方法で総契約損失を補っています。
Bybitにおける社会的損失システムとはどのようなものなのか、ご紹介していきます。
そもそも社会的損失とはどういうもの?
社会的損失というのは、さまざまな事象によって社会全体が被る損失のことをいいます。
たとえば近年では禁煙が主流になってきましたが、「禁煙」が社会全体に及ぼす損失は約2兆500億円にも上るといわれています。
つまり社会的損失とは、その事象と個人とが関わりの有る無し関係なく、社会全体に影響が出ることを指しますす。
仮想通貨取引所での社会的損失システムの仕組み
仮想通貨業界での社会的損失システムとは、「社会」を「仮想通貨取引所」に置き換えて考えるとわかりやすくなります。
社会的損失システムを導入している取引所では、ユーザーが出してしまった大きな損失を、収益のあるユーザー全体で補うという考え方に基づいて導入しています。
万が一ユーザーの損失が増え、さらに破産価格よりも不利な価格で決済されたとしましょう。
その損失を補填するために社会的損失システムが使用されています。
つまり、その仮想通貨取引所を利用している全てのユーザーが、その利益に比例して損失を補っていくわけです。
利益を多く出しているユーザーから、少ししか利益を出していないユーザーまで、全ての人が損失を補わなければならないため、社会的損失システムに不公平感を感じているユーザーも多くいるようです。
トレーダーが不満に感じる社会的損失システム
社会的損失システムは、損失を抱えてしまったユーザーにとっては非常にありがたいシステムといえますが、利益を出しているユーザーにとってはあまりありがたいとはいい難いシステムでしょう。
なぜなら、取引所に1人でも高リスクのユーザーが存在すれば、利益が出ている全てのユーザーも被害を被ってしまう可能性があるからです。
しかもリスクの少ない、つまり少ない証拠金で、低いレバレッジでやっと利益が出た状態のユーザーまでもが損失をカバーしなくてはなりません。
<社会的損失システムの主な欠点>
- 低いリスクの取引で、少ない利益を出ているユーザーまでもが、利益に応じて損失を補填しなければならないこと。
- 高いリスクで取引をしている人のカバーを、低いリスクで取引きしている人までが行わなくてはならないこと。
- 社会的損失システムに該当したユーザーは、特定の決済日まで利益を引き出すことができないこと。
すなわち、高いリスクを承知で取引きしている人は利益が出れば大きいにもかかわらず、損失が出た時だけ、どうして低リスクで利益も少ない取引きをしている人までがカバーしなくてはいけないのか、と疑問を持つのも当然です。
こうして考えると、社会的損失システムの考え方は公平性に欠けていることが分かるでしょう。
Bybitの企業姿勢
Bybitはその企業姿勢として、全てのユーザーが公平で快適な取引ができることを目標にしています。
その思いは、Bybitのプラットフォームの隅々にまで反映されています。
もちろん社会的損失システムについても、基本的な考え方が公平ではないと理解しています。
どうして大きなリスクを承知で取引きしている人が出した損失を、少ないリスクで、しかも利益もあまり出ていない人までがカバーしなくてはいけないのか。
これが果たして本当に「社会的」で「公平」なのかを考えた際に、社会的損失システム以外の方法を考え出さなくてはならない結論に至りました。
そこで考え出されたのが、自動デレバレッジシステムでした。
Bybitの採用するシステムについて
Bybitでは、公平さに欠ける欠点がある社会的損失システムは採用せず、「自動デレバレッジシステム(ADLシステム)」を採用することでユーザーの万が一の損失を補填しています。
これは清算の際に破産価格よりも不利な価格で決済されてしまった場合に、破産価格と最終決済価格の差を補填するためのものです。
簡単にいうと、社会損失システムとは補填するユーザーの選び方が異なるということです。
ADLシステムではユーザーが実行しているレバレッジ、それにユーザーの利益率をベースに、全てのユーザーをランク付けしています。
すなわち高いレバレッジを使って、より収益性が高いユーザーがランクの上位に来るわけです。
そして万が一、契約損失が発生した際は、ランク上位のユーザーから順に補填の対象としていく仕組みです。
そのため、低リスクで取引しているユーザーが補填しなければならないケースは極めて低くなります。
また、全てのユーザーは自分のADLランキングを常に確認することができます。
ランキングを見て、補填対象となることを避けたいと考えるのであれば、低いレバレッジに変更すれば、ランキングが下がっていきます。
ADLシステムの例
あるユーザーが8,000USDで3,000BTCを購入したとしましょう。
この時、清算価格は7,700USD、破産価格は7,500USDでしたが、価格が暴落したために清算となってしまいました。
しかしこの時の最終取引価格は7,300USDだったとすると、破産価格よりも200USD低くなります。
通常、この200USDは保険基金システムで損失を補うようになっています。
万が一、保険基金に十分な残高がなかった場合に限り、ADLシステムが機能するようになっています。
まず保険基金システムが選択され、それではカバーできない場合にADLシステムが稼働しますので、損失が出たら、必ずランキング上位の人が損失をカバーするわけではありません。
ユーザー | 契約数(売り) | ランキング (損益率×実効レバレッジ) |
---|---|---|
ユーザーA | 4,000 | 6 |
ユーザーB | 2,600 | 5 |
ユーザーC | 2,400 | 4 |
ユーザーD | 2,000 | 3 |
ユーザーE | 2,000 | 2 |
ユーザーF | 4,000 | 1 |
この表はBybitのユーザーのランクを表しています。
このランキング表が作成された時点では、ユーザーAが最上位になっています。
そのために今回起こってしまった契約損失を補填するのはユーザーAとなります。
ユーザーAはその際、7,500USDの破産価格で3,000BTC分の契約損失を補うことになります。
つまりユーザーAは自身の契約数4,000BTCから、補う損失分の3,000BTCを差し引いて、残るのは1,000BTCの契約になるわけです。
1,000BTCの契約ではランキングの上位に残ることがなくなるため、次に損失が出た場合でも補償しなければならない可能性は低くなるでしょう。
なお、最初に説明した損失が3,000BTC ではなく、10,000BTCだったなら、ユーザーAだけでなくユーザーB・C・Dまでが補填の対象となり、この4人で損失を補わなければならない仕組みです。
まとめ
社会的損失システムは、例えるならば連帯責任のようなものです。
同じ取引所内に1人でも高リスクで取引しているユーザーがいれば、利益を出している全ての人がリスクにさらされることになってしまいます。
社会的損失システムは多くの取引所で導入されていますが、もしこのシステムに納得できないのであれば、ADLシステムを採用しているBybitを選ぶべきではないでしょうか。