仮想通貨FX業者はなぜ小さな島や国でプラットホームを開設するの?
- 業者
- 2019.04.11.
- 仮想通貨FXブログ
- 仮想通貨FX業者はなぜ小さな島や国でプラットホームを開設するの?
仮想通貨取引は、一部取引が禁止されている国もありますが、を除いて、規制こそあるものの取引に前向きな姿勢を崩していないところがほとんどです。
世界的にみれば仮想通貨取引は容認されている国が多く、日本もまたそのような国の一つです。
しかし、海外の仮想通貨FX業者の動きをみると、香港のような経済面で自由度の高い都市からでも業者が本拠地を移しています。
その行先は、セーシェル諸島やマルタ共和国・中央アメリカのベリーズなどが主で、普段聞き慣れない島名・国名ばかりです。
なぜ仮想通貨FX業者は、本拠地をこのような場所に移すのでしょうか。
今回は、その理由について掘り下げてみました。
仮想通貨は市民権を得たがビットコインの暴落で規制が厳しくになった
まずは、仮想通貨の近況から、仮想通貨FX業者の思惑について考察してみましょう。
もっとも分かりやすい原因は、2018年初頭に起こったビットコインの暴落がきっかけとなっています。
仮想通貨取引は、2017年後半から勢いづき、2017年12月から2018年1月上旬には、取引史上最高レベルでの値上がりを見せます。
しかし、その後投資家たちが売りに転じたことで暴落し、時期を見誤った人たちが大打撃を受ける結果にもつながりました。
この大暴落の一因を作ったのは中国当局と言われています。
中国では2017年9月に仮想通貨取引所やICOを禁止とし、2018年1月から国内でビットコインのマイニングも抑制する方向に向かったことが決定打となりました。
中国の動きはやや極端だったものの、もともと仮想通貨について明確な規制がなされていなかったのは他の国でも同様で、今後は特にICOが規制される動きが強まると予想されます。
そのため業者としては、規制が緩い地域に本拠地を移動することで、自由な取引ができるようにしたいとの思惑が働いているものと考えられます。
ちなみに、日本は改正資金決済法が成立・施行されたことにより、取引所の規定も設けられるようになりました。
仮想通貨に対して寛容な姿勢が評価され、取引所は日本にも数多く誕生しています。
日本も海外諸国にとっては島国の一つであり、不思議な共通点ではありますが、少なくとも日本の仮想通貨市場にとっては追い風になりそうです。
もっとも、今後規制の動きが強まれば、その限りではありません。
経済的に自由度の高い香港業者も他国に移動
仮想通貨取引所の本拠地が最も多く、他国から移動してくる国の一つが、マルタ共和国です。
マルタを特に有名にしたのは、2018年3月に世界最大規模の仮想通貨取引所「BINANCE(バイナンス)」が香港からマルタに拠点を移したというニュースでした。
マルタ共和国はBINANCEがやって来ることを快く受け入れ、場合によっては業者に有利になるよう司法制度を改善することも考えるという姿勢を示しました。
このことから、マルタ共和国の国策として、今後はブロックチェーンに関連するビジネスを推進させようとする思惑が見て取れます。
この試みは今のところ成功の流れにつながっていて、同じく香港に拠点を置く「OKEx」もマルタ共和国に拠点を移しました。
日本の主要業者が拠点を移動することは考えにくいものの、規制が強化されれば今後どうなるかは分からないでしょう。
何より、中国本土よりも法人税が安く仮想通貨に対しても寛容だった「自由経済都市・香港」の業者が、海外に拠点を移したことで、その流れが加速することは間違いありません。
2019年現在においては、香港よりも有利な国が存在していることを知った業者の多くが、拠点の移動を準備・あるいは始めているものと考えられます。
規制が少ないことと税率が安いことが主な移転の理由
それでは、マルタ共和国に拠点を移動することで、具体的にはどのようなメリットが享受できるのでしょうか。
やはり大きな部分は税率の安さ、仮想通貨に対する規制の緩さが一つの基準になるようです。
香港とマルタ共和国とを比較して、税率・規制について考えてみましょう。
※出典元:香港BS
香港では、2018年4月以降、2,000,000香港ドルまでの利益については8.25%の新税率が導入されることになりました。
ただし2,000,000香港ドルを超える利益に対しては従来通り16.5%のままの税率です。
BINANCEの純利益は2018年で4.5億ドルという規模ですから、従来と変わらない税率が適用されるものと思われます。
よって、もっと有利な地域に拠点を移したいと考えるのは、自然なことに感じられます。
それではマルタの法人税はどうなのでしょうか。
単純に法人税だけを比較すると、35%となっているため割高です。
しかし、マルタには税の還付制度があり、通常法人であれば納付した税額のおよそ86%が還付される仕組みとなっています。
納税したものを還付するという制度のため、二重課税回避条約を結んでいる国同士であれば、政府が認めた形で還付金が受け取れるのです。
そのため、還付が違法なものとして処罰されるリスクもありません。
所得税も低率であり、キャピタルゲインには税金がかからず、相続税や贈与税も発生しないため、タックスヘイブンと言われるには十分過ぎるほどの好条件です。
これだけの材料が揃っていると、企業にとって魅力的なのは言うまでもありません。
仮想通貨に対する政府の姿勢も重要で、マルタ共和国の首相がBINANCEに対して歓迎の意を示していることから、今後大きな問題が起こらない限り仮想通貨FX業者との蜜月は続くことでしょう。
ICOの規制は、結果的に国益を損なうおそれもある
仮想通貨FX業者は、多くの国がこれから行おうとしている規制の流れに対して、それほど失意を感じてはいないようです。
しかしICOについて多くの政府が「リスクの高さ」を懸念していることについては、好ましくない傾向だと考えているはずです。
ICOについては「詐欺まがい」の事例が報告されていることから、将来的には禁止という選択肢も視野に入れている、あるいはすでに禁止している国は少なくありません。
確かに、広く国民を守る立場の政府としては、ある程度の規制は妥当性のある判断でしょう。
しかし、金融機関を介さずスピーディーに資金を調達できるICOは、将来的によりニーズが高まることが予想され、規制のかかる国では発展性がないと受け止められてしまう可能性があります。
おそらくBINANCEが香港を出た理由には、中国がICOを禁止したことが大きな要因となっているでしょう。
結果的に、中国は今後得られるはずの大きな富を一つ潰してしまったことになります。
もっとも、その良し悪しを判断するのは政府ですから、仮想通貨FX業者は利益を最大化するために動くまでです。
業者が取引に対する規制が少ない国に移動することや、政府が取引にルールを設けることも当然かもしれません。
長い目で見たときに、ICOの規制は国益に影響を及ぼすリスクはあるはずですが、仮想通貨が世界中で当たり前に通貨として利用される状況となるまでは、規則を設けることは致し方ないのかもしれません。
おわりに
仮想通貨FX業者が拠点を移動するのは、利益の最大化を考えた結果です。
トレーダーにとって、仮想通貨FX業者が進歩していくのは良い傾向ではあるものの、もともと拠点があった国にとっては損失につながるおそれもあります。
日本にしても、仮想通貨が一般的に流通しているとは言い難く、ビットコインバブルから時間が経過していない状況もあって、世界各国の規制緩和を期待するのは難しそうです。
しかし革新的な政策を取らずにいれば、いずれ先進国と呼ばれる国々でも、通貨の面で後れを取ることになるかもしれません。