ビットコイン取引手数料高騰化の理由と影響
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- 2020.10.31.
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- ビットコイン取引手数料高騰化の理由と影響
ビットコインが法定通貨と大きく異なるのは、送金が誰でも簡単にでき、しかも早く相手に送ることができるという点です。
だからこそ国を出て働くことが多く、銀行口座も持てない海外諸国の人々は、新たな送金手法としてビットコインなどの仮想通貨に注目してきたわけです。
そのビットコインは新型コロナウイルスによるパンデミック以降、資産の安全な逃避先として重宝され、価格が上昇しつつあります。
2020年10月31日時点では140万円を超えるまで上昇しています。
ビットコインが金融資産として多くの人々に認められていけば、価格が上昇していくことは当然のことといえます。
しかしその一方で、急激な価格高騰によってネガティブな一面も顔を覗かせてきました。
それが送金などの取引手数料の高騰化です。
もちろん、価格が高騰したことだけが手数料の高騰化につながっているわけではありません。
しかし取引手数料の高騰化はビットコインにとってデメリットも多い課題です。
2020年10月末時点における送金手数料高騰化について、詳しくご説明しましょう。
ビットコイン取引手数料が急激に高騰化
ビットコインの取引手数料が2020年10月末の週に入ってから急激に上昇していることが分かりました。
ビットコインの手数料はビットコインバブルの時期に高騰しており、最高で55ドルにまで達していましたが、その後は落ち着いていました。
ところが2020年10月26日にビットコイン価格が13,000ドルを記録した後、上昇し始めており、28日には5.85ドルにまで達していました。
下のbitinfochartsのグラフをみれば、いかに手数料が高騰しているかが分かるはずです。
画像引用:bitinfocharts.com
ビットコインのマイナーの収入源には、大きく分けてマイニング報酬と取引手数料があります。
マイニング報酬はビットコインをマイニングできたことによる報酬です。
そして取引手数料とは、送金や売買などの際の取引を承認することによる報酬です。
マイナーはこの2つの報酬が主な収入源になっているわけですが、2020年10月28日になってマイナーの報酬のうち、取引手数料の比率が高くなってきていることがブロックチェーンデータ分析企業であるグラスノード(glassnode)によって報告されています。
画像引用:glassnode Twitter
手数料からのマイナーの収入は、過去1時間(24時間MA)で22.25%に増加しました。
2018年1月以来の最高観測値です。
引用:glassnode Twitter Google翻訳
つまりグラスノードの報告によると、現在の手数料はビットコインバブルの時期に次いで上がってきているということになります。
ビットコイン送金手数料の仕組み
ビットコインなどの仮想通貨における送金手数料は、本来は0円であっても問題ありません。
ただマイナーが送金データの処理をおこなうにあたり、手数料が高いものから順番に処理していくため、0円のものは処理が後回しにされてしまいます。
手数料が少しでも高いものの方が優先的に処理されるわけです。
もちろんビットコイン全体の取引量が少なければ、安い手数料や0円でも処理されるでしょうが、取引量が増えてくるといつまで経っても処理されないということになってしまいます。
そのため取引量が多くなると、必然的に送金手数料を高くしなければなかなか処理されないという現象が起きてきます。
承認されていないトランザクションも急増
ビットコインの手数料が高騰してきた同じタイミング、つまり2020年10月28日に承認されずにとどまっているトランザクションが156,000件にまで膨らんでいることが、Johoe’s Bitcoin Mempool Statisticsのデータで分かりました。
なお承認されていないトランザクションがこれほど増えているのは、2018年1月以来のことです。
画像引用:Johoe’s Bitcoin Mempool Statistics
このデータはMempool、すなわちネットワークがどれほど混雑しているかが分かるもので、新たな取引があった場合、その取引が承認される前段階の記録場所のデータ量を記録することで混雑具合が分かります。
これらのことからビットコインの手数料が高騰しているだけでなく、取引量が極端に増えたことで未承認のトランザクションも増えているということが分かります。
こうなると、少しでも早く承認してもらうために手数料が余計に上がっていくという悪循環に陥ってしまいます。
手数料の高騰と未承認トランザクション急増の背景
ではこれほど取引手数料が高騰し、未承認トランザクションが増えた背景にはどのようなことがあるのでしょうか。
もちろんビットコインの取引量が急に増えたことが根底にはありますが、それだけではありません。
大きな原因として挙げられるのは、マイニングの難易度が高まっているにもかかわらず、ハッシュレートが大きく下落していることでしょう。
ビットコインのディフィカルティは2020年10月18日に「+3.62%」で調整されました。
3.62%分、マイニングの難易度が高くなったということです。
そしてディフィカルティがプラス調整されたにもかかわらず、ハッシュレートは以下のように下落しています。
画像引用:blockchain.com
これではビットコインのトランザクションに積み残しが出てしまうもの当然です。
ハッシュレートが大きく下落している原因とは
これほど大きくハッシュレートが下落する原因には幾つかのことが考えられます。
1つが、マイナーが非常に多い地域である中国四川省で、豊水期といわれる雨季が終わったことでしょう。
中国では水力発電がマイニングに利用されており、豊水期は安い電力をマイニングに利用することができます。
しかし豊水期が終わってしまうと電気代が高くなるため、それほどマイニングできなくなってしまいます。
そしてもう1つが、世界でも最大規模の仮想通貨取引所であるOKExで、出金ができない状態になっていることでしょう。
OKExが出金できない状況については2020年10月21日のニュース記事「海外仮想通貨取引所BitMEXとOKExで相次ぐ不祥事」内でご説明した通りで、10月31日時点でも出金できない状態が続いています。
OKExは仮想通貨取引所だけでなくマイニング事業も運営していますが、出金停止によって満足にマイニング部門も運営できない状態に陥っていることが考えられます。
手数料高騰の影響と改善に期待
ビットコインの取引手数料が高騰していくと、取引そのものに高額な手数料が課せられる可能性があるだけでなく、送金などもできなくなってしまいます。
ビットコインの資産価値が高まっても取引しづらく、仮想通貨の大きな特徴である送金しやすさも失われてしまいます。
これではビットコイン価格への影響も避けられなくなってしまいます。
せっかく上昇してきた価格が、このような理由で下落してしまうことは何としても回避したいものです。
手数料の高騰と未承認トランザクションの増加を改善するきっかけになるのではと期待されるのが、次回のディフィカルティ調整です。
ディフィカルティは2週間毎に調整されるため、次回のディフィカルティ調整は2020年11月1日の予定です。
予想では大きく難易度が下げられるといわれており、その通りであればマイナーが積極的にマイニングをおこなうことが考えられます。
つまりハッシュレートも上がっていくということです。
この動きになれば、手数料の値下げや無承認トランザクションの解消につながっていく可能性があるでしょう。
まとめ
ビットコインの取引手数料高騰についての現状と背景、そして改善につながりそうな事柄についてご説明しました。
取引手数料が高くなりすぎるのは、資産として考えた場合にデメリットしかありません。
せっかくビットコインの資産としての地位が向上し、価値も高まってきたタイミングで、デメリットが噴出することは回避したいものです。
このことが回避できれば、さらなる価格上昇につながっていくのではないでしょうか。