2020年施行の仮想通貨法規制は業界を発展させるのか
- 考察
- 2019.12.19.
- 仮想通貨FXブログ
- 2020年施行の仮想通貨法規制は業界を発展させるのか
日本という国は仮想通貨視点で見てみると、これまで何度も大量の流出被害を受けた世界でも数少ない仮想通貨流出被害大国です。
そのせいなのか、現在の日本の仮想通貨に対する規制は非常に厳しく、金融活動作業部会(FATF)からも日本の仮想通貨規制は諸外国と比べると2年進んでいるといわれるほどのものになっています。
そして2019年5月31日には、仮想通貨に対する規制を強化する「改正資金決済法」と「金融商品取引法」が可決されました。
これによって2020年からは、今まで以上に厳しくなった規制の下で仮想通貨取引がおこなわれることになります。
ではこの新しい法律は、今までとどんな点が異なるのでしょうか。
またこれが日本の仮想通貨市場や業界を発展させることにつながっていくのでしょうか。
もっと改正すべき点はないのでしょうか。
今回のブログでは、これらのことをテーマにご説明します。
改正に至った背景と今回の改正ポイント
マネーロンダリング対策やテロ支援資金供与対策に必要な、国際的協調や協力の推進をおこなう政府間機関である金融活動作業部会(FATF)が、諸外国よりも2年進んでいると評した日本の規制がさらに厳しくなったのにはどのような背景があったのでしょう。
また、改正のポイントとはどのようなものなのでしょうか。
改正した背景とは
今回の改正に至る前の2017年、仮想通貨に関する法律は一度改正されています。
その際のポイントは、仮想通貨交換業者を登録制にするということ、そして顧客に対する説明義務に関することの2点でした。
これらの改正をおこなったにもかかわらず、仮想通貨の流出や内部体制の不十分さなどが露呈し、利用者を十分に保護できていないため改正されることになりました。
今回の改正ポイントとは
今回改正されるポイントは、大きく以下の点に区分されます。
- 名称を仮想通貨から暗号通貨に変更
- 流出対策や広告などの規制とカストデイ業務など、業務に関する規制
- 扱い暗号資産の届け出や不正行為の禁止、優先弁済権など取引適正化に関する規制
- 証拠金取引やICOなどに関する規制
これら全てを説明するのには相当なボリュームになってしまうために現実的ではありませんが、新しい法律は仮想通貨取引所に今までよりも厳しい規制を設けるとともに、顧客が不利益を被ることがないことに主軸を置いて改正されているようです。
改正の実施時期について
改正法案の公布は2019年6月7日でしたが、施行される日は決められていないようです。
ただし施行は公布から1年以内となっているため、2020年の6月7日までに施行されることになります。
BitbankのCOOが改正案に納得
ソウルで開催された「Asia Digital Asset Exchange 2020」において、日本の仮想通貨取引所であるBitbankの執行役員COOである三原弘之氏が、2020年の改正法施行は日本の仮想通貨業界が発展する足掛かりになると答えています。
画像引用:bitcoinbank
三原氏はこの法改正について、政府は日本の仮想通貨市場を規制によってはっきりさせる方向で動いていること、そしてこれらは日本の仮想通貨トレーダーにとって今まで以上の安全な環境になっていく旨を説明しています。
さらに、日本での仮想通貨事業は登録制であることが、安心な取引につながっているとも述べています。
5月には国内取引所への新規申し込みが急増
Bitbankの三原氏は2019年5月21日、テレビ東京の人気経済情報番組であるWBS(ワールドビジネスサテライト)に出演し、法改正についてとそれに関連して仮想通貨取引所の新規申し込みが増えていることに加え、ビットコイン高騰の理由なども紹介しています。
画像引用:tv-tokyo WBS
番組の中では、5月に入ってからビットコイン価格が高騰したこともあってBitbankに対する新規口座の申し込みが急増したことを紹介しています。
そして、この要因となっているのが規制の強化であることも挙げています。
またビットコイン価格の高騰理由については、米中貿易摩擦が起きていることによって株だけでなく、商品先物取引市場などからリスクを回避するために仮想通貨の代表格であるビットコインに資産が流れてきていることが考えられると説明しています。
上のWBS(ワールドビジネスサテライト)オンデマンド画像が、「ビットコイン価格上昇の陰にトランプ大統領!?」となっているのは、米中貿易摩擦のことを示しているのでしょう。
新規口座申し込み急増の理由とは
下のチャート図はtradingviewBTCJPYの2019年1年間の動きを表したものです。
このチャート図を見ると、WBS内でBitbankの三原氏が説明したように、4月頃からビットコイン価格が上昇していることが分かります。
画像引用:tradingviewBTCJPY
では、Bitbankに対する新規口座の申し込みが急増した背景に、規制の強化などの法整備が影響しているのでしょうか。
確かに三原氏が説明したように、規制強化は仮想通貨取引所を利用する人々にとって安心感につながるでしょう。
しかし、だからといって今まで仮想通貨取引をしたことがない人たちが急に取引を始めるでしょうか。
それよりも影響が大きかったのは、ビットコイン価格が上昇したから自分も儲かるかもしれないと考えた人が多かったということではないでしょうか。
日本の仮想通貨取引が海外より劣っている点
2019年時点の仮想通貨に関する規制も金融活動作業部会(FATF)が評したように、諸外国からみれば進んでいるでしょうが、それが2020年からさらに厳格になるわけです。
他国の規制が現状のままであったとすると、さらにその差は開くでしょう。
しかし日本の仮想通貨取引には大きな欠点があると、ほとんどのトレーダーは考えています。
その欠点は2019年12月14日のニュース記事「日本の仮想通貨FXはレバレッジ2倍になるのか」でも書かせていただいた、レバレッジ規制とゼロカットが導入されないことです。
仮想通貨取引所が規制によって正しい取引ができるようなったり、企業としてコンプライアンスが高まるのは非常に素晴らしいことであり、必要なことです。
しかしこれは一般的な企業であれば当然のことでしょう。
また政府が利用者の保護を考えてくれるのもありがたいことではありますが、その保護が本来あるべきものなら、それは当然のことだともいえます。
仮想通貨取引に取り組んでいる多くの人が望むのは、レバレッジを下げれば安全だという考えを改めて欲しいこと、そしてゼロカットと呼ばれる万が一の時でも追証を抱えることのないシステムの構築です。
ゼロカットを設定せずにレバレッジを低くするのは、ボラティリティの大きな仮想通貨取引には利用者保護にならないばかりか、余計に危険性を高めていることになってしまうという事実を、国や規制当局に理解してもらわなければなりません。
これはすなわち日本という国が、仮想通貨そのものや仮想通貨取引を将来的にどうしていこうと考えているのかが問われているわけです。
現状の規制の方向性が間違っているとはいえないものの、日本における仮想通貨業界の発展に間違いなくつながっていくかと問われれば、納得して首を縦に振ることができない人が多いのではないでしょうか。
まとめ
2020年に施行される仮想通貨に関する規制が、日本の仮想通貨業界の将来を発展させることになるかについてご説明しました。
レバリッジやゼロカットについては賛否両論あるかもしれませんが、Bybitをはじめとする海外の仮想通貨取引所は例えレバレッジ100倍であっても、ゼロカットなどで利用者が追証を抱え込むことのない安全システムが組み込まれています。
これは日本の仮想通貨取引所でも是非導入すべき仕組みです。
2020年に施行される厳格な規制に付加して、高いレバレッジとゼロカットが導入された時、初めて日本は仮想通貨大国に生まれ変わったといえるのではないでしょうか。