当初の計画から6社離脱したリブラ協会の今後
- 仮想通貨関連
- 2019.10.13.
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- 当初の計画から6社離脱したリブラ協会の今後
フェイスブックの仮想通貨リブラについて、ホワイトペーパー内で公表されていたリブラ協会のメンバー企業が計6社離脱したことが分かりました。
まず最初にPayPalが離脱し、その後5社が離脱したわけです。
他の企業もこの離脱に続くのでしょうか。
それとも新たな参加企業が出てくるのでしょうか。
5社が離脱することになった経緯と、現時点で分かっているリブラとリブラ協会の今後についてご説明しましょう。
リブラ協会から大手企業5社の離脱が判明
フェイスブックの仮想通貨リブラを運営するリブラ協会のメンバー企業として、ホワイトペーパー内でも公表されていた大手企業5社が、協会から離脱することが判明しました。
離脱するのはVisa、Mastercard、イーベイ、ストライプ、メルカドパゴで、いずれも世界的な大手企業です。
VisaとMastercardはクレジットカード会社として世界的にも知名度の高い企業ですから、どなたでもご存知のはずです。
イーベイ(eBay)はカリフォルニア州に本社があるグローバルEC企業です。
日本ではイーベイジャパンとしてご存知の方も多いかもしれません。
ストライプ(Stripe)はサンフランシスコに拠点を置く、オンライン決済処理のプラットフォームを提供し、PayPalからも将来を有望視されたほどの企業です。
メルカドパゴはアルゼンチンに本社があり、EC決済サービスを提供する企業として中南米の特にブラジルでは有名企業です。
実はこれら5社が離脱する以前の2019年10月4日には、カリフォルニア州サンノゼに本社がある決済サービス企業PayPalが離脱表明していました。
今回の5社を含めると、合計6社が仮想通貨リブラのプロジェクトから離脱したことになります。
大手企業が離脱を判断した理由
これらの6社はどうして仮想通貨リブラのプロジェクトから離脱することを決めたのでしょうか。
全ての企業の離脱理由が明らかになっているわけではありませんが、何らかのコメントを発表している企業についてのみご説明します。
Visaの離脱理由とは
Visaが説明している理由としては、仮想通貨リブラを運営するリブラ協会の規制に対するコンプライアンスを挙げています。
ただし、ブロックチェーン技術の将来性に対しては非常に有望視しているため、リブラの規制に対するコンプライアンスが納得できるようになれば、改めて関わる意思があることを表明しています。
イーベイのコメント
イーベイは離脱理由は説明していないものの、リブラプロジェクト自体には強い興味を持っていること、しかし設立メンバーとしてはこれ以上参加しないと説明しています。
ストライプのコメント
ストライプも離脱理由は明らかにしていません。
説明したのは、ストライプ社自体がEコマースを利用しやすくするためのプロジェクトには積極的にかかわっていく方針であり、リブラプロジェクトに対してもその姿勢は変わらず、動向をみながら必要な場合には連携していきたい旨をコメントしています。
PayPalの離脱理由とは
PayPalは現時点での参加見送りを表明したものの、協業の検討は続ける旨を発言したと、AFP通信が2019年10月4日に報道しています。
しかしこの報道の直前である10月1日、PayPalが中国の中央銀行である中国人民銀行の承認を受け、オンライン決済サービスを展開することが報道されました。
このサービスは中国で初となる海外プラットフォームの導入ということになります。
中国では以前から人民元に変わるデジタル通貨発行を考えていますが、このデジタル通貨にとって仮想通貨リブラは非常に邪魔な存在であり、中国でもリブラを認める気配はありません。
また中国ではSNSのFacebookも禁止されており、フェイスブックが主導するリブラ協会に参加しているPayPalがサービスを展開することは好ましくないのでしょう。
PayPalとしては、今は中国の事業に専念しておき、批判を受けているリブラは後回しにする、そんな考えがあるのかもしれません。
米議員からのプロジェクト参加再考依頼
上記のリブラプロジェクト離脱企業のうち、VisaとMastercard、ストライプの3社のCEOに対して、米の議員がプロジェクト参加再考を依頼する書簡を送っていました。
書簡を送ったのはオハイオ州選出上院議員のSherrod Brown氏、それにハワイ州選出上院議員Brian Schatz氏の2人です。
画像引用:Brian Schatz Twitter
両議員はこれらの企業に対して、仮想通貨リブラは世界中の金融システムはもちろん、VisaとMastercard、ストライプの決済にリスクが伴ってくることを説明し、リブラプロジェクトに正式署名して参加する前に、これらのリスクについてどう取り組むことが正しいのかを検討して欲しいことを訴えました。
そしてフェイスブックがこれらのリスクに真摯に取り組んでいることを議会だけでなく、規制当局そしてプロジェクト参加企業にも示していないと説明しました。
さらに仮想通貨で最も問題となるマネーロンダリングやテロ支援資金供与対策についても、はっきりとした計画が提示されていないことを言及していました。
両議院が書簡を送ったVisaとMastercard、ストライプの3社は、もともとフェイスブックのプライバシーに対する問題意識に不安を感じており、正式参加をするかどうかを迷っていると米Bloombergが報道していました。
両議員がそのことを理解したうえで、あえてこの3社に書簡を送ったのかどうかは報道されていません。
離脱に対するリブラ側の対応
上記のリブラプロジェクトからの離脱に対して、フェイスブックの子会社であり、リブラ協会のメンバー企業カリブラのCEOであるDavid A. Marcus氏は、VisaとMastercardに対してこれまでの協力への感謝の表現と両社の意思を尊重することをTwitterで書き込んでいます。
画像引用:David Marcus Twitter
リブラプロジェクトに対する参画企業
リブラプロジェクトに参画する大手企業が6社抜けてしまったことに対するリブラ協会側の今後の対処方針は、どのようなものなのでしょうか。
これについてはリブラ協会広報責任者であるDante Disparte氏が、現在1,500の企業がリブラプロジェクトと協会に参加することに強い関心を持っていると説明しています。
ただ1,500の企業についての具体的な説明は一切なく、世界に名だたるVisaやMastercardなどの巨大組織が抜けても十分補えるようと印象付けるための説明であることも考えられます。
いずれ時間が経てば、これら1,500の企業の中にVisaやMastercardに匹敵する規模の企業が入っているのかが分かるでしょう。
10月23日にザッカーバーグ氏の議会証言
ホワイトペーパー発表後、多くの議会や規制当局から批判を受けているフェイスブックのCEOであるMark Zuckerberg氏が、2019年10月23日の米下院金融委員会の公聴会に出席することが報道されました。
米金融委員会は当初からリブラに対する懸念について言及しており、Mark Zuckerberg氏本人から法令順守をどのように構築しようとしているのかを追求する構えのようです。
2019年7月にカリブラのCEOであるDavid A. Marcus氏が公聴会に出席しましたが、今回の公聴会では、フェイスブックやリブラに対する不信感がどう解消されるのかを明確にさせる必要があるでしょう。
まとめ
フェイスブックの仮想通貨リブラを運営するリブラ協会から6社が離脱した詳細と、それに対するリブラ協会の反応などについてご説明しました。
リブラはプロジェクトそのものは素晴らしいのに、フェイスブックが関わっていなければもっとスムーズに進んだはずだという主旨の報道がありました。
まさにその通りで、フェイスブックがこれまでの事件で抱えてしまった不信感さえなければ、今のような批判を受けることなくスムーズに進み、VisaやMastercardなどの巨大企業も離脱することはなかったはずです。
その意味では10月23日の公聴会は非常に重要であり、その場でいかに議員の不信感を解くことができるかが今後の重要なポイントになってくるでしょう。
10月23日のニュースでどのような報道がされるのかを待ちましょう。