伊藤忠取り扱いコーヒー豆の履歴追跡が可能に
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- 2019.09.21.
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以前は野菜や卵など、加工しないでそのまま店頭に並ぶ食材については、生産者がこだわりをもって作ったにもかかわらず、これまでそのこだわりぶりはあまり知られませんでした。
しかし近年は生産者の顔写真入りで、コメントまで掲載された食材が店頭に並んでいることも多く見受けられます。
消費者からすると、生産者の顔が分かり、こだわりぶりや情熱が伝わってくるだけで安心して購入できるからです。
そして、このような食材はどんどん増えてきています。
そんな環境に変わりつつあっても、いまだにどんな人が作り、どんな経路を通じて店頭に並んだのか分からないものもあります。
特に日本以外の国で生産されるものなどはその傾向が強く、コーヒー豆も生産者や流通経路などが消費者から見えないもののひとつとして挙げられます。
そんなコーヒー豆の情報をブロックチェーン技術を活用して消費者から見えるよう、日本に輸入されるコーヒー豆の3割以上を扱っている伊藤忠商事が取り組み始めました。
このニュースについて詳しくご説明しましょう。
伊藤忠商事がコーヒー豆プラットフォームに参画
2019年9月19日、日本の大手商社である伊藤忠商事が、ブロックチェーンを活用したコーヒー豆のトレーサビリティプラットフォームである「FARMER CONNECT」に参画することを発表しました。
画像引用:ITOCHU news
伊藤忠商事の参画で、このプラットフォームに参画しているのは、コロンビアコーヒー生産者連合会や米JMスマッカー、オランダJACOBS DOUWE EGBERTS、カナダRGCコーヒー、ベルギーBeyers Koffie、スイスSucafinaの計7社となり、いずれも世界に名だたるコーヒー取り扱い事業者ばかりが参画したことになります。
なお伊藤忠商事は、この中で唯一のアジア圏にある会社となります。
FARMER CONNECTとは
ではコーヒー豆トレーサビリティプラットフォーム「FARMER CONNECT」とはどのようなものなのでしょうか。
産地で異なるコーヒー豆の味と香り
コーヒー豆はコーヒーベルトと呼ばれる北回帰線と南回帰線に挟まれた地域のおよそ70ヵ国で生産されています。
コーヒーの銘柄で、例えばブルーマウンテンであればジャマイカで生産されており、コナはハワイ、キリマンジャロはタンザニアで生産されている銘柄です。
つまり生産地が銘柄で決まっているわけです。
しかしそうでない地域でもコーヒー豆は多く生産されています。
例えば近年では、ベトナムやネパールなどでもコーヒー豆は生産されています。
このような地域では有名銘柄と同じ品種の木を栽培しても、コーヒーにして飲んでみると味や香りが異なってきます。
これは気候と栽培地の土壌、生産技術の違いなどによるものといわれています。
またコーヒー豆の生産では、木を植え、育て、収穫、焙煎などの工程が必要になりますが、これらを一つの業者がこなしているケースばかりではありません。
色々な業者の手を経て、最終的なコーヒー豆として日本に入ってきているケースも多くあります。
この記事の冒頭で記述したように、コーヒー豆は生産地や生産者、それぞれの工程でかかわった人々のことが全く分からない状態で購入しなくてはならない食品でした。
ブロックチェーンを使ったFARMER CONNECT
FARMER CONNECTはコーヒー豆が消費者に届くまでの工程、すなわち苗木を植え、栽培から収穫、運搬、焙煎、商品化などの全ての情報をブロックチェーンに記録してあります。
もちろん生産地がどこで、生産者は誰で、いつ収穫され、いつ輸出・輸入され、焙煎はいつ誰の手でおこなわれたのかなども記録されているわけです。
消費者はこれらの情報を例えばQRコードなどで瞬時に知ることができるため、生産地だけでなく、焙煎業者を選ぶことや焙煎されてから日が浅い商品を選ぶことも可能になります。
また気に入った生産者に対して仮想通貨をチップとして送ることもできるようになります。
すなわちFARMER CONNECTは、これまで消費者が知ることができなかったコーヒー豆が生まれるまでの物語を送り届けることで、商品ができるまでの過程を透明化できることになります。
生産者にとってのメリットも創出
このブロックチェーンを活用したFARMER CONNECTを採用することは、消費者だけにメリットがあるわけではありません。
実はコーヒー豆生産者にもメリットが生まれてきます。
上で述べたような消費者から直接チップを送ってもらうことだけでなく、FARMER CONNECT上にコーヒー豆の生産履歴や支払い履歴も残ることになり、これが生産者の業績となり、信用力を得ることができるようになります。
これによって銀行からの融資などの取引の可能性も高まっていくわけです。
この背景には、以下のようなことがあります。
「最近、世界のコーヒー価格は10年以上で最低価格に達しました。多くの農家は、新しい作物への転換や移住によって完全に産業から撤退せざるを得ません。 この傾向が続くと、広範なサプライチェーンに深刻な影響を与え、最終的に小売価格の上昇やコーヒー生産国数の減少という負担を最終的に負うのは消費者になるでしょう」
引用:FARMER CONNECT をGoogle翻訳
このように、FARMER CONNECTにはコーヒー文化を支える狙いもあり、消費者だけが恩恵を受けるものではありません。
画像引用:FARMER CONNECT
将来的なFARMER CONNECTの姿
FARMER CONNECTのスマホアプリは2020年に公開される予定となっています。
その後FARMER CONNECTはコーヒー豆だけでなく、対象をココアやお茶など、生産者が小規模の農家を対象にした生産商品に展開を広げていきたいとのことです。
これにはコーヒー豆の生産農家を支えるだけでなく、ココアやお茶などの生産者には小規模農家が多く、これらの文化を絶やすことなく支えていきたいという思いが込められています。
既に発表されているトレーサビリティプラットフォーム
コーヒー豆に関するトレーサビリティプラットフォームでいえば、既にスターバックスがマイクロソフトと提携して展開することを2019年5月6日に発表しています。
このトレーサビリティプラットフォームではFARMER CONNECTと同様、コーヒー豆ができるまでの全ての情報を記録し、コーヒー豆の生産農家をバックアップすることだけが目的ではなく、スターバックスのドライブスルーにおけるオーダーの予想や複数店舗における機材を同時に管理することなども視野に入れられています。
画像引用:GeekWire
コーヒー豆以外に目を向けると、ワインにもトレーサビリティプラットフォームが活用されています。
シンガポールのVeChain財団のワイントレーサビリティプラットフォームは既に実施されており、オーストラリアで有名なペンフィールドワインをタグ付けして流通しています。
このケースではコーヒートレーサビリティプラットフォームとは主旨が異なり、偽物の流通を防ぐ意味があります。
高級ワインだけあって、中国などでは大量のペンフィールドワインの偽物や偽瓶が流通しており、その被害をくい止めるためにブロックチェーンを活用してワイナリーから流通過程の全ての業者がすぐに分かるようにすることで、素性を明らかにしているわけです。
まとめ
伊藤忠商事がコーヒートレーサビリティプラットフォームに参画したニュースについてご説明しました。
このプロジェクトの優れている点は、消費者だけに利点があるわけでなないことです。
消費者はもちろん、苦境にあえぐコーヒー豆の生産農家にとってもメリットがあり、コーヒー文化そのものを下支えできるものです。
世界に目を向ければ、このような食材はコーヒー以外にもあるはずです。
ブロックチェーンによって苦戦している文化や食材にスポットライトを浴びせることができるのは、画期的な活用法といえるでしょう。