Bitfinexとテザー社に対するNY州政府事務局からの文書
- 取引所
- 2019.05.15.
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Bitfinexとテザー社が、NY州の司法長官から訴追されました。
司法長官から訴追されるとは穏やかなことではありません。
一体この2社に何があったのでしょうか。
本記事では、このBitfinexとテザー社の訴追について、どこが問題点になっているのかを整理し、あまり良くない噂の多いテザー社の疑惑についても解説しましょう。
Bitfinexとテザー社に裁判所命令
2019年4月24日、仮想通貨取引所Bitfinexを運営するiFinex社と仮想通貨「テザー」を発行するテザー社に対し、ニューヨーク州の司法長官が文書を発表し、訴追しました。
画像引用:NY州司法長官の公式ページ
NY州司法長官の公式サイトによると、Bitfinexは法定通貨の入出金業務を依頼していたCrypto Capital社に8億5000万ドルを送金。
そしてその8億5000万ドルの損失の穴埋めにテザー社の準備金から7億ドル以上を補てんしたとされています。
この8億5000万ドルの損失とテザーの資金移動について、投資家への説明がなかったことが問題視されているわけです。
なお、iFinex社とテザー社の経営者は同じです。
この訴追により、Bitfinexに関連する個人は、テザー社が保有する準備金へアクセスすることや、これらに関連する文書や電子データについて改ざんすることが禁じられました。
なぜニューヨーク州の司法長官が命令?
Bitfinexを運営するiFinex社と、テザーを発行するテザー社は、どちらも香港の企業体です。
では、なぜニューヨーク州の司法長官が海外の企業に対して裁判所命令を発令するのでしょうか?
それは、ニューヨーク州の投資家が「利用することができる」取引所だからです。
ニューヨーク州の司法長官Letitia James氏の公式ページでは、次のように表現されています。
Bitfinex取引プラットフォームは、ニューヨーカーがいわゆる「テザー」安定コインを含む仮想通貨を購入し取引することを可能にします。
そして、ニューヨーク州の投資家が利用できるからには、その仮想通貨取引所は、ニューヨーク州の州法によって管理されるとしています。
ニューヨーク州は、法律に従って仮想通貨事業を運営することを義務付ける方法を先導してきました。そして、私たちは投資家のために立ち上がって、これらの会社のどれかに誤解されたり騙されたりしたときに彼らのために正義を求め続けます。
この問題の論点はなにか
ニューヨーク州の司法長官が問題にしているのは、「Bitfinexが隠蔽工作を行った」という点です。
詳しくいうと、「Bitfinexが8億5000万ドルの損失を隠すために隠蔽工作を行った」ことが州法に違反していると主張しています。
あわせて、損失を隠すための資金がテザー社の準備金だったことにも注目が集まっています。
テザー社が発行する仮想通貨テザー(USDT)は、米ドルが1:1の割合で裏付けされており、ユーザーが米ドルへ戻したいときはテザー社に依頼すればいつでも同数量の米ドルが返却されることが特徴です。
テザーを発行する裏付けとして、テザー社はテザーと同額の米ドル準備金を常に用意していることを保証していました。
もしテザーの準備金が別のことに使用されていたとするなら、「テザーが1:1で米ドルを担保にしている」という裏付けが崩れてしまいます。
姉妹会社に損失があったからといって、通貨を発行するルールを破っていいことにはなりません。
そもそも、テザー社には「本当に準備金を用意しているのか」「本当は準備金が無いのに、テザーをどんどん発行しているのではないか」といった疑惑の声が多くありました。
今回の訴追をきっかけに、準備金の疑惑についても解明されるのではないかと注目が集まっています。
鍵となるCrypto Capital社
今回の事件の鍵となるのがCrypto Capital社です。
Crypto Capital社は、Bitfinexが顧客との法定通貨の入出金を行うための支払い業者として契約していた、パナマにある企業です。
Bloombergの記事によると、大半の銀行が仮想通貨取引所と取引することを拒むため、Bitfinexは正規の銀行ではないCrypto Capital社と契約することになったとのことです。
しかし、2018年半ば頃にCrypto Capital社は入出金を停止してしまいます。
ニューヨーク州の司法長官の主張によると、Crypto Capital社は約8億5000万ドルの損失があった、または盗難にあったとしています。
それによって、Bitfinexは、法定通貨の入出金に対応できなくなったとしています。
事実、2018年10月11日にはBitfinexには入金ができなくなっていました。
入金ができなくなってから4日後にアナウンスがあり、入金の停止は「入金処理の効率化」のためだとしました。
2018年10月11日木曜日、Bitfinexは合併症の処理に直面して、特定の顧客口座のために一時的に小額預金(USD、GBP、EUR、JPY)を一時停止することを決定しました。
引用:Fiat Deposit Update — October 15th, 2018 -Medium(Google翻訳)
また、公式アナウンスの際、「出金は正常にできる」としていましたが、実際出金に時間がかかったユーザーの声が多く聞かれました。
なお、Bitfinexの主張では、Crypto Capital社が利用できなくなったのは「政府によって不当に口座を差し押さえられていたから」としています。
Bitfinexは、訴追された翌日にWebサイト上で次のように声明を発表しています。
ニューヨーク検事総長の裁判所の申立ては誠意をもって書かれており、Crypto Capitalでの8億5000万ドルの「損失」との主張を含む誤った主張で曖昧になっています。それどころか、これらのクリプトキャピタルの金額は失われたのではなく、実際には押収され、保護されてきたとのことです。
引用:Bitfinex Responds to New York Attorney General’s Actions(google翻訳)
このように、Crypto Capital社が利用できなくなってしまったことは事実として認めていますが、その理由がニューヨーク州の司法長官の主張とは異なると、Bitfinexは反論しています。
そして、顧客からの出金要請に応えなければいけないため、テザーの準備金をBitfinexへ送金しました。
この送金が隠蔽工作なのかどうかにおいても、双方の主張は食い違っています。
Bitfinex側弁護士の主張
Bitfinexとテザー社の弁護士を努めてきたStuart Hoegner氏は、裁判所に提出した宣誓供述書において、「Tetherの準備金の比率は74%だが、問題はない」と主張しています。
その根拠の一つとして、銀行はテザーよりも遥かに低い自己資本比率で同じような事業を行っているからであるとしています。
さらに、同文書では、「Crypto Capialを利用していたとき、2018年から引き落としの問題が起き始めた。そして少なくとも1つの政府機関が、Crypto Capitalの資金差し押さえに関与していることを確認した。」としています。
そして続けて、「Bitfinexは、ニューヨーク検事総長室や米国連邦法執行機関などさまざまな機関に対して、Crypto Capialの引き落としの問題とそれに付随する懸念について、積極的かつ自発的に通知した」と主張しています。
そして、Bitfinexがテザーの準備金から6億2500万ドルを引き出したのは、善意の解決策を示しただけで、あくまで「借入金」であるとしています。
テザー社の疑惑
テザー社に対しては、「準備金を用意せずにテザーを発行しているのではないか」という疑惑がありました。
外部監査を受けて証明してほしいという声にも耳を傾けず、監査法人フリードマンLLPとの関係を打ち切ったことでさらに疑惑は深まりました。
また、1度に数十億~100億円ものテザーが発行されたことで、「一体誰がそんな大金を入金してテザーを発行させているのか、空発行なのではないか」といった疑問の声も上がっていました。
弁護士のStuart Hoegner氏の発言で、準備金との比率が1:1になっていないことが明らかににされましたが、これも事実なのかはわかりません。
まとめ
疑惑が払拭されない限り、Bifinexやテザーを利用することは避けたほうがよいでしょう。
Bitfinex社とテザー社は、「テザーからBitfinexへの送金は、借入金だから問題ない」と主張していますが、NY州司法長官は「損失を隠蔽するためのものだ」としています。
また、入出金業務を依頼していたCrypto Capital社についても、Bitfinex側は「政府に差し押さえられて使えなかった」としていますが、NY州側は「Crypto Capital社の損失または盗難があった」としています。
色々な疑惑が渦巻いているため、真実はどこにあり、今後のどのようになっていくのか、全く予想できませんが、少なくとも今回の一件が仮想通貨に対する信頼度を高めることにならないのは明白です。
今後の調査に注目しましょう。