ウォール街の洗礼を受けたビットコイン

以前から注目されていたビットコイン現物ETFが2024年1月11日、SEC（米証券取引委員会）によって承認されました。

もしビットコイン現物ETFが承認されれば今まで以上のより多くの人々がビットコインに対して投資をしやすくなるだけでなく、新たなビジネスの創出にもつながっていくため、価値は高まっていくはずだと考えていました。

そして承認されてから2日後の現在、本記事執筆時点のビットコイン価格は625万円台を推移しています。

一時は700万円を超える額まで上昇していたはずなのに、どうしてここにきてこれほど下落しているのでしょう。

これには承認までに起きたことだけでなく、ビットコインを取り巻く環境が変化していることも関係していると考えられます。

そこで今回は、ビットコイン現物ETFの承認にどれほど期待が高まっていたのかが分かる出来事に加え、ビットコインを取り巻く環境の変化、そして今後のビットコイン価格について考察してみましょう。

承認への期待が高まっていたことが分かる出来事

SECはそれまで申請されてきたビットコイン現物ETFをことごとく却下していましたが、2023年8月29日の裁判で投資運用会社最大手Grayscale Investment（グレースケール）社に有利な判決が出されました。

そのためSECがビットコイン現物ETFを認めることになるのではないかとの噂が飛び交っていました。

もし承認されればどのような効果があるのかが盛んにニュースとして取り上げられ、中にはビットコイン価格が過去の最高値を更新し、天井知らずになる可能性があるとの報道もありました。

また承認が発表されるのはいつなのか、承認されない可能性もあるなどの報道も目にしました。

つまりこれらの報道によって、いやがうえにもビットコイン現物ETF承認に対する期待は高まっていったはずです。

そして2024年1月10日、つまりSECが正式に承認を発表する前日にSECの公式Xが乗っ取られ、ビットコイン現物ETFを承認するとの偽情報が流れました。

画像引用：SEC公式Xアカウント　偽情報

この乗っ取られたSEC公式Xへの投稿は、わずか20分ほどの間に440万回も閲覧された後、削除されました。

しかしその影響は非常に大きく、ビットコイン価格は短時間で1,000ドル以上も上昇しました。

その後、この投稿はSEC公式Xが乗っ取られて投稿されたものであることが分かると、ビットコイン価格は2,000ドル近く一気に下落しました。

これはいかにビットコイン現物ETFの承認に期待が高まっていたのかが分かる事実といえます。

ビットコイン現物ETF承認後の価格上昇と下落

2024年1月11日、SECによってビットコイン現物ETFが承認されたことが発表され、その後のビットコイン価格は上昇しました。

TradingViewのデータでは、1月11日の23時45分に48,664ドルを記録しています。

画像引用：TradingViewBTCUSD 一週間

しかし48,664ドルを記録した直後からビットコイン価格は下落を始め、1月13日には一時41,869にまで下落し、本記事執筆時点では42,000ドル台を推移しています。

それまでビットコイン現物ETFの承認にあれほど期待が高まっていたにもかかわらず、高値を更新したのは一時的で、承認からわずか3日目にして6,000ドル以上も下落しているわけです。

おそらく仮想通貨FXを利用している人は、あれだけ期待されていたのにどうしてこんなにも下落してしまうのだろうと考えるでしょう。

ビットコインは現物ETFの承認でウォール街の洗礼を受けた

あれだけ多くの人々から期待されていたビットコイン現物ETFが、承認を受けた途端に大きく価格が下落したのには理由があるはずです。

その理由とは、ビットコイン現物ETFに投資する人々、つまりウォール街の人々が参入してきたということでしょう。

ビットコイン現物ETFが承認されるまでのビットコインは、投資対象として捉えている人はまだまだ少なく、どちらかという投資というより投機的な意味合いで捉えている人が多かったはずです。

ビットコインのボラティリティの大きさだけでなく、取引所の破綻やハッキングなどもあり、不安定で危険なものと考えられていたからでしょう。

ビットコインをはじめとする仮想通貨市場に機関投資家の参入が増えてきたとのニュースが報道されていたのは、裏返すと、それだけビットコインなどに投資する機関投資家が少なかったからこそニュースになったということです。

しかしビットコイン現物ETFが承認されたということは、投資対象として国が認めたということと同義であり、これまで以上の多くの人々が参入しやすい環境が整ったことになります。

これはすなわち、ビットコインはウォール街のプロ投資家ともいえる人々から影響を受けやすいものになったといえるわけです。

プロ投資家の常とう手段に翻弄されるビットコイン

プロ投資家は投資対象に絶対的な自信がなければ投資をおこないません。

つまり確実に儲けられる場合しか投資しないということです。

彼らの常とう手段は「噂で買って、ニュースで売る」というものです。

投資家は常にアンテナを張り巡らせ、価格上昇するものを探しています。

情報に敏感なわけです。

そんな彼らが、これまで不安定で危険要素が大きかったビットコインで、現物ETFが承認される可能性が高まったことを知れば、どう動くでしょうか。

前述したように、ビットコイン現物ETF承認に関するニュース報道があふれ、偽情報が流れただけでも短時間のうちに1,000ドル以上も高騰してしまうことは、それだけでも承認のニュースが流れれば価格が上昇することは間違いないといえます。

ただ、ビットコイン現物ETFはこれまでに無い初めてのものであり、承認後にどのような動きをするのかは分かりません。

不確実なわけです。

つまりプロ投資家にすると、承認までの期待感は信頼できるが、承認後にどうなるかは不安要素があると判断するでしょう。

すなわち「噂」はSECがビットコイン現物ETFを承認するであろうということであり、「ニュース」は承認されたという事実だといえます。

今後のビットコイン価格はどうなるのか

プロ投資家の「噂で買って、ニュースで売る」という手段によって、ビットコイン価格は現物ETF承認直後から比較すると大きく下落してしまいましたが、この先のビットコイン価格はどうなっていくのでしょうか。

ビットコインの価格について予想しているニュースをご紹介しましょう。

アーク・インベストCEOの予想

資産運用会社ARK Invest（アーク・インベスト）のCathie Wood（キャシー・ウッド）CEOが2024年1月11日のCNBC Televisionに出演し、ビットコイン価格は2030年までに150万ドルに達する可能性があると述べました。

画像引用：CNBC Television

キャシー・ウッドCEOは番組内で、SECによるビットコイン現物ETFの承認で、ビットコインの強気シナリオの可能性は高まったとし、これまで予想していた100万ドル予想から、予想到達額を150万ドルに修正しました。

この強気予想の背景には、ビットコインのハッシュレート上昇に加え、ビットコイン長期保有者が存在していること、そして低迷期と比べると残高がゼロではないアドレスが増加していることがありますが、それに加えてビットコイン現物ETFの承認が加わったことが挙げられます。

スタンダード・チャード銀行の予想

英ロンドンを本拠地とするStandard Chartered（スタンダード・チャード）銀行は、2024年の年末までにビットコイン価格は10万ドルに、2025年末までには20万ドル近くまで上昇するとレポート内で予想しています。

ビットコイン現物ETFが承認されたことで、2024年には500億ドルから1000億ドルの資金が流入すると予想しており、その通りに推移していけば2025年の年末までには20万ドル近くまで到達する可能性があるとしています。

なおこのレポート内では、ビットコイン現物ETFを金ETP（上場取引型金融商品）と比較しています。

金ETPは2004年に発売され、7年後に価格は4倍以上に上昇していました。

ビットコイン現物ETFは金ETPと同じように上昇する可能性があり、しかも金ETPより短期間である1、2年で上昇するだろうと予想しています。

ビットコインの価値をさらに高める半減期

ビットコイン価格に影響するのはビットコイン現物ETFだけではありません。

今年4月に予定されているビットコインの半減期があります。

画像引用：oklink

本記事執筆時点では半減期まで100日を切りましたが、今度の半減期によってビットコインのマイニング報酬は、これまでの6.25BTCからその半分の3.125BTCとなります。

半減期によって市場に出回るビットコイン供給量が少なくなるため、ビットコインの需要が高まっているにもかかわらず供給量が少なくなると、必然的にビットコイン価格は上昇します。

つまりビットコイン現物ETFの効果をさらに高めるのが半減期ということです。

まとめ

仮想通貨FXを取引している人の多くがビットコイン価格の高騰につながると思っていたビットコイン現物ETFは、蓋を開けると大きな下落となってしまいました。

しかしこの下落はウォール街のプロ投資家によるものであり、それだけ多くの人の投資対象になったともいえます。

価格は下落しましたが、ビットコイン現物ETFはいずれビットコイン価格の上昇につながっていくはずです。

そのことは理解しておいてください。

また4年に一度の半減期まで100日を切っています。

半減期はビットコインの価格上昇につながる一大イベントであり、ビットコイン現物ETFとの相乗効果が期待できるはずです。

今後のビットコイン価格の上昇に期待しましょう。